JR九州は一昨年10月に東証一部に上場を果たして以降、鉄道事業の赤字削減に積極的に動いています。JR九州の利益の大半は不動産開発や駅ナカ事業で稼いでいて、鉄道事業はずっと赤字です。上場企業なので株主から赤字削減を求められるのは当然のことで、その動き自体は何らおかしいことではありません。
ただ、公益企業としての立場を忘れたかのような、拙速かつ強引な進め方が目に付きます。今年3月17日のダイヤ改正では予告なく特急列車を含む117本もの減便や始発の繰下げ終電の繰上げ、区間短縮を行いました。それにより通学や日常生活に支障が生じるところも出る始末で、地元自治体からの改善申し入れも相次ぎました。それに対して7月に時刻の微修正を行いましたが、減便の回復についてはほぼゼロ回答で、申し入れが黙殺された形となりました。
また、コスト削減の一環として、今年3月17日のダイヤ改正時に以下の大分市内8駅で「ANSWERシステム」と呼ばれる駅遠隔管理システムを導入し、駅員を撤収し無人化する計画がありました。
- 日豊本線:牧、高城、鶴崎、大在、坂ノ市
- 豊肥本線:敷戸、大分大学前、中判田
この件が表沙汰になったのは昨年8月で、12月から地元に対して説明会を実施しました。当然ごとく反発の声が挙がりましたが、ガス抜きが終わったとばかりに今年1月末に無人化を実施することが一旦発表されました。
しかし、地元の反発が(想定外に?)大きかったことやバリアフリー対応が未実施だったため、2月に入り牧駅を除く7駅については3月ダイヤ改正での導入は見送られました。わずか一ヶ月弱で方針撤回したことになり、拙速に事を進めた印象はどうしても残ります。
無人化=利用者が少ないというイメージがありますが、牧駅を除く7駅は直近の年の1日の乗車人員が1000人を超えています。特急が停車する鶴崎・大在駅は2000人を超えていて、大分県内で4位・5位の乗車人員の駅です。特に大在駅は周辺の宅地開発が進み10年前の1.5倍に増えています。他の駅も微増傾向にあり、なぜこの7駅が無人化対象になったのかちょっと理解できません。
今年3月に無人化予定だった8駅全部に行ってきました。大在駅は初めて訪れました。普通列車のほかに上り2本、下り1本の特急列車が停車します。2面3線のホームがあり、駅舎側に1番線があります。列車交換がない限り上下線とも1番線から発着しますが、列車交換がある場合や大在駅始発・終着列車については跨線橋を渡って2・3番線へ行く必要があります。
その跨線橋ですが、段数が多い階段しかなくエレベーターはありません。自力で歩ける高齢者でも上り下りが大変そうでした。無人化後に介助を必要とする人が利用する場合は乗車前日の20時までにサポートセンターへ乗車列車を申し出た上でサポート要員の予約する必要が生じ、移動の制約が加わります。障害者団体が無人化に特に強く反発していたのはそのためです。
大在駅にはマルス端末(MR32型)がありました。3月改正号の時刻表には「3月16日で鶴崎・大在駅のみどりの窓口営業終了」の記載がありましたが、無人化延期により今も営業継続しています。JR九州はバリアフリー対応が済み次第無人化したいようですが、果たしてどうなりますやら。
ちなみに、10月31日のプレスリリースで12月1日より敷戸・大分大学前の両駅について「ANSWERシステム」導入により無人化することが発表されました。これで8駅中3駅が無人化されることになります。
【補足:2023/5/23】
先日、残された5駅について2023年7月から「ANSWERシステム」を導入し、そのうち高城・大在・坂ノ市・中判田の4駅を無人化することが発表されました。鶴崎駅については一部時間帯は有人できっぷの販売を行うそうです。
計画から5年で完遂となりますが、障害者団体から訴訟が提起され一審判決も出ない中、半ば黙殺するような形で無人化を実施してしまうことは個人的にはどうかと思います。案の定、訴訟当事者の障害者団体は強く反発しているようです。