鴨川市3駅無人化
今年6月末で千葉県鴨川市にある太海・江見・安房天津の3駅が簡易委託を解除し無人化されました。江見駅は昭和48年4月から、太海駅は昭和60年2月から鴨川市が国鉄から委託を受け管理していました。安房天津駅も同様に鴨川市と合併する前の天津小湊町が昭和60年3月から管理していました。
3駅とも30年以上も長きにわたって簡易委託が続けられてきましたが、鴨川市の昨今の厳しい財政状況から、税金を投じてまでJRの業務を肩代わりする必要はないという判断に至ったようです。
最近、JR東日本管内で簡易委託が解除になる事例は受託側の都合が多いように思われます。今年9月末に予定されていた長野県安曇野市の6駅の無人化は来年3月末まで延期されましたが、これも市のコスト削減が発端でした。
江見駅は簡易委託の窓口とともに、鴨川市営の観光案内所も設置されていました。窓口の脇には平成4年10月の「お願い」として「鴨川市が乗客の利便と安全性を図るために簡易委託を受託し、10月1日よりJR全線のきっぷが発売できるようになりましたので、ぜひ当駅で往復乗車券を買ってください(要約)」と訴える看板が設置されていました。
おそらく、このタイミングで硬券や補充券での発売から、POS端末による発売に移行したんだと思います。ちょうどJR東日本から常用の硬券がなくなったタイミングと一致します。
無人化するということは市が乗客の利便性や安全性に関与することをやめたとも捉えられますが、ここ数年は1日の乗車人員が80人程度で推移している状況では、税金を投入してまで継続する必要はないという判断に傾いても仕方がないと思います。
今回無人化された3駅にはいずれもPOS端末がありました。いずれも料金補充券(料補)による指定券の取り扱いはありませんでした。
無人化から2ヶ月ほど経った8月23日のJR東日本のプレスリリースで面白いものがありました。日本郵便と締結していた連携協定に基づき、郵便局と駅の機能連携として、江見郵便局を江見駅に移転した上で江見駅を郵便局との合築に建て替え、郵便局にてきっぷや定期券の発売や精算などの駅窓口業務を行うことが発表されました。
駅窓口業務の取り扱い内容として、きっぷや定期券の発売とあるので、POS端末が再設置される可能性が高そうです。まさかの常備券はさすがにないと思います。
郵便局は郵便局業務の傍らでJRからの委託手数料が入る上に、移転前の江見郵便局の跡地を処分することができます。JRは自社の敷地に郵便局を建てることで賃料を得ることができ、郵便局に駅窓口業務を委託することで、旅客サービスの低下を防げます。鴨川市は税金を投入せずとも窓口を維持することができ、乗客の利便性と安全性の確保という市民サービスが提供できます。
郵便局への簡易委託は磐越西線・徳沢駅で行っていた例があり、これが初めてではありません。このスキームは人口が減って人手不足が懸念される中で、郵便局と駅を一体化して両者のサービスを維持することができ、利用客を含む当事者全員にとって都合よくできているなと思いました。今後、他の駅にも広がっていくことを期待したいです。