常磐線・浪江駅は福島県浪江町にある駅です。東日本大震災に伴う福島第一原発事故で原発から半径20Km以内が警戒区域に指定されたことにより、一時期町の大部分が立ち入り禁止となっていました。
2017(平成29)年3月に町の山間部を除き避難指示が解除されたことに伴い、同年4月に浪江~小高間の運転が再開し、浪江駅の営業も6年ぶりに再開しました。震災前は「スーパーひたち」の全列車が停車し、みどりの窓口がありました。
手持ちのきっぷを探してみたところ、浪江駅のMEM端末で発券したきっぷがありました。おそらく、震災直前にはMEX端末が設置されていたと思います。
2017(平成29)年4月の再開時は駅員は時間限定(11:10~19:10)で配置されたもののみどりの窓口は再開されず、代わりにMV50型の指定席券売機が設置されました。発売箇所表記は「浪江駅VF1」でした。
今年3月14日のダイヤ改正で最後まで不通となっていた富岡~浪江間が開通し、常磐線は全線で運転を再開しました。そのタイミングでいわき以北にも特急「ひたち」が3往復設定され、浪江駅にも全列車停車することになりました。一緒に駅の体制についても変更があるのかなと思っていたところ、予想外の動きとなりました。
いわき~原ノ町間で特急が停車する広野・富岡・大野・双葉・浪江の5駅を「Smart Station for EXPRESS」とし、オペレーター対応のMV50型「話せる指定席券売機」を導入し、券売機や精算機は遠隔対応できるようにしました。これに伴い浪江・富岡駅はダイヤ改正前日の3月13日をもって無人化され、震災前に有人駅だった大野・双葉駅は無人駅として営業再開しました。みどりの窓口が設置されない可能性は高いと予想していましたが、無人化までは予想外でした。
JR東日本のオペレーター対応の指定席券売機と言うと、「Kaeruくん」が思い出されます。2005(平成17)年から2年ほどかけて56駅に設置されましたが、機械のレスポンスが悪くオペレーターの教育も不十分で当初から不評でした。その後もロクな改善(末期はオペレーターの質はかなり良くなりましたが)や機能追加もされず2012(平成24)年3月までに全て撤去された黒歴史でもあります。
また同じようなもの入れて正直大丈夫かいな??という思いはありましたが、「話せる指定席券売機」と同型の端末はJR他社でも導入事例があり概ね軌道に乗っていること、オペレーターの教育をちゃんと行い「Kaeruくん」での失敗を分析し今後に活かせば悪くは転ばないのかなという気もしました。
多少アングルは異なりますが「Smart Station for EXPRESS」前後の比較です。浪江駅はダイヤ改正と同時に東京側のSuica利用エリアに組み込まれたため、近距離券売機も緑から黒の多機能型に交換されています。2枚目の写真の指定席券売機の右側に書類の読み取り部があり、黒券売機の左側にインターホンが設置されています。運賃表の変化にも注目です。
「話せる指定席券売機」で購入したきっぷです。隣の駅までの乗車券なので、オペレーターは介していません。発売箇所表記が「浪江駅VF1」から「浪江駅VA1」に変わっています。JR北海道や東海のようなエドモンソン券を発券する機能もありません。また、無人化に伴って入場券口座が削除されて買えなくなっています(多機能券売機ではなぜか買えます)。
震災前の浪江町の人口は2万人を超えていましたが、避難先から帰還し現在浪江町に居住している人(≠住民票がある人)は1,100人あまりだそうです。2018(平成30)年度の浪江駅の乗車人員は1日たった24人で、JR東日本が管内の乗車人員を把握可能な駅のうち下から10番目という少なさです。震災前直近の2010(平成22)年度は734人だったので、30分の1以下です。
常磐線が再開したところで住民の帰還が進んでいない現状では、特急列車が再開しようが利用客の劇的な増加は見込みづらいところです。増してや、駅周辺が未だ帰還困難区域で住民がほぼいない大野・双葉駅は遅れながらも帰還が進んでいる浪江駅よりもっと利用客が少ないはずです。
無人化には少なからず驚きましたが、そういった現実を鑑みると、駅員を配置しないという選択肢になるのは仕方がないのかなという気がします。