「南予・松山10枚回数券」は松山~南予地区までの乗車券+自由席特急券が10枚セットになった回数券です。伊予大洲発着を除き、5回分の「指定席引換券」が付いてきますので、10回のうち5回は指定席も利用できます。有効期間は3ヶ月です。
価格は以下のとおりになっています。
区間 | 南予・松山1回分 | 正規運賃・料金 | 割引率 | |
---|---|---|---|---|
松山 | 伊予大洲 | 1,150円 | 1,500円 | 30.0% |
八幡浜 | 1,680円 | 2,500円 | 32.8% | |
卯之町 | 1,730円 | 2,670円 | 35.2% | |
伊予吉田 | 1,730円 | 2,860円 | 39.5% | |
宇和島 | 1,780円 | 3,030円 | 41.3% |
いずれも100Kmに満たない区間ですが、割引率が30~40%超と非常に高いです。
特急「宇和海」は松山~宇和島間を1日33本(16.5往復)運転されていて、日中はほぼ毎時1本走っています。片や、宇和島自動車の高速バスもほぼ同数の1日16往復運転されています。
高速バスの片道正規運賃と往復割引運賃は以下の通りとなっています。この他に6枚回数券というものもあるようですが、こちらは割愛しました。また、八幡浜には高速バスは経由しないためJRの独壇場となります(いちおう伊予鉄バスの路線バスがありますが、本数も少なく時間もかかるためJRとは勝負になりません)。
区間 | 片道正規運賃 | 往復割引運賃 | |
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道後~松山 | 大洲駅前 | 1,250円 | 2,150円 |
卯之町 | 1,800円 | 3,050円 | |
吉田 | 1,950円 | 3,250円 | |
宇和島 | 2,200円 | 3,750円 |
こうして比較してみると、「南予・松山10枚回数券」は高速バスの片道正規運賃に対抗した価格に設定していることが推測できます。
松山~宇和島間の所要時間は「宇和海」が1時間20~30分なのに対し、高速バスは1時間45分~2時間10分で「宇和海」の方が優位です。しかし、高速バスは道後・松山市駅・一番町三越前(≒大街道)といった停留所があり、松山市中心部への利便性は高いです。
10枚使うアテはなかったので、松山市内の金券ショップで1枚買って使用してきました。割引率が高い割に需要は限られるせいか金券ショップでの販売価格は強気で、2,000円を超えていました。
四国では高速道路網の整備が比較的早く進んだため、JR四国は高速バスと激しい競争を強いられています。四国の都市間輸送の中で松山~宇和島間はJRが高速バスに対し優位に立っている数少ない区間であるため、高速バスに対してガチンコ勝負を挑むようなきっぷを発売しているんだと思います。
【補足:2022/9/9】
来月の「しこくスマートえきちゃん」アプリ開始のタイミングで「南予・松山10枚回数券」は全区間発売終了するそうです。代わりにアプリ内で「スマえきSきっぷ」という乗車券+自由席特急券がセットになった片道タイプの商品を発売しますが、松山~宇和島間は2,720円で「南予・松山10枚回数券」から2~5割割高になっています。
【補足2:2023/5/14】
「しこくスマートえきちゃん」アプリは予定より1か月遅れて2022年11月からサービスを開始しました。そのタイミングで「南予・松山10枚回数券」は発売終了しています。アプリ内で発売される「スマえきSきっぷ」は正規の乗車券+自由席特急券の額から約1割引きで、「南予・松山10枚回数券」よりは大幅に高くなっています。