JR九州は一昨日12月24日に「割引きっぷ見直しのお知らせ」というプレスリリースを出しました。見直しと言うと良くなるイメージがありますが、こういうリリースの出し方をする場合は間違いなく悪い話です。
そして、それは利用者にとっては予想以上にひどい内容でした。新型コロナの影響による利用者の減少を理由に、3月末で「九州新幹線2枚きっぷ」などのトクトクきっぷや一部ネットきっぷの発売終了、「2枚きっぷ」の設定区間の大幅削減(51区間→20区間)、九州新幹線絡みのネット専用きっぷの値上げという具合で、とんだクリスマスプレゼントでした。
以下に概要をまとめます。
【全区間発売終了するトクトクきっぷ・ネット専用きっぷ】
- 九州新幹線2枚きっぷ
- 九州新幹線日帰り2枚きっぷ
- 京都・大阪・神戸往復割引きっぷ
- 新幹線往復割引きっぷ
- つばめ限定!九州ネット早特7
- JQ限定!九州ネット早特14
【2枚きっぷの設定区間削減】
以下の20区間以外はすべて発売終了
価格据え置き | 価格値上げ | |
---|---|---|
指定席 | 福岡市内~長崎 福岡市内~大村・竹松 福岡市内~佐世保 福岡市内~ハウステンボス |
博多~肥前鹿島 福岡市内~別府・大分 福岡市内~臼杵・津久見 福岡市内~佐伯 北九州市内~別府・大分 |
自由席 | 博多~小倉 博多~門司港 博多~行橋 宮崎~鹿児島中央 |
博多~佐賀 博多~肥前山口 延岡~宮崎・南宮崎 延岡~宮崎空港 |
乗車券 | 長崎~佐世保 博多~唐津・西唐津 福岡空港~唐津・西唐津 |
― |
【ネット専用きっぷの値上げ】
- 九州ネットきっぷ
- 九州ネット早特3・7
- B&Sみやざきネットきっぷ (いずれも4月1日乗車分から適用)
「2枚きっぷ」は福岡市内~中津や佐賀~長崎、博多~鳥栖、宮崎・南宮崎~日向市など一見需要のありそうな区間までなくなっています。また、北九州市内発着はほぼ壊滅しました。
博多~熊本間で値上げ前後の比較をしてみます。特段注釈がないものは指定席の価格です。
2021/3/31まで | 2021/4/1以降 | |
---|---|---|
正規運賃+特急料金 | 5,230円(指定席) 4,700円(自由席) |
|
九州新幹線2枚きっぷ(自由席) | 3,800円 | 発売終了 |
九州ネットきっぷ | 3,670円 | 4,300円 |
九州ネット早特3 | 3,060円 | 3,800円 |
九州ネット早特7 | 2,620円 | 3,200円 |
つばめ限定!九州ネット早特7 | 2,390円 | 発売終了 |
ネット専用きっぷはいずれも2割程度値上げされています。7日前まで購入で購入後変更不可という条件の一番厳しい「ネット早特7」ですら3,000円を超えました。2,000円台の価格は速さで高速バスを圧倒する新幹線が価格でも遜色ないレベルで対抗する意味合いもあったと思いますが、こうして見ると新幹線にも安さを求める層は見切りをつけて、単価最優先に舵を切ったように見えます。
今回廃止される区間のきっぷを探してみたところ、10月の九州出張の際に利用した「2枚きっぷ」がありました。博多~鳥栖間は1枚当たり840円で、運賃+270円でした。自由席タイプの「2枚きっぷ」は安さと駅で買ってすぐ飛び乗れる気軽さが良かったんですが…。
JR九州は2018(平成30)年5月末で「2枚きっぷ」より割引率の高い「4枚きっぷ」を全廃しています。さらに昨年10月に一部の「2枚きっぷ」に適用されていた福岡市内発着を博多単駅の発着に変更し地味に利用可能駅を狭めており、ここ2年で実質的な値上げを2回行っています。割引きっぷが廃止された区間はネット予約を使えと仰っていますが、九州新幹線が絡む区間はネット専用きっぷだって値上げされています。
JR九州の鉄道事業はずっと赤字で、小売や不動産開発で収益のほとんどを稼ぎ出して穴埋めしています。もともと本州三社ほどの収益力はないのに、分不相応に上場してしまっているばかりにJR北海道・四国のように国からの支援も受けられません。なので立ち位置としてはJRグループで一番苦しいのかもしれません。
ただ、現実問題として新型コロナ禍で大変なのは重々承知していますが、今度のダイヤ改正で列車の本数はまたも減らされ、トクトクきっぷやネット予約までこうも露骨に改悪されてしまうと、さすがに利用意欲が減退します。新型コロナが落ち着いて利用が回復したとしても、列車の本数やトクトクきっぷの価格が元に戻ることはないでしょうし…。
今回お亡くなりになるきっぷはこちら↓