SL鬼滅の刃
◆種別:快速
◆区間:熊本→博多
JR九州は昨年9月29日から12月28日までの3ヶ月間、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の公開を記念して、テレビアニメの「鬼滅の刃」とのコラボキャンペーンを実施しました。
11月の5日間、熊本~博多間の片道で快速「SL鬼滅の刃」を運転しました。機関車は「SL人吉」で使用されている8620形の56854号で、客車は「SL人吉」と同じ50系客車です。昨年7月の豪雨により肥薩線が不通で「SL人吉」が運転できなくなっているので、その遊休利用という側面もあったと思います。
8620形56854号は1922(大正11)年の製造です。「鬼滅の刃」は大正時代の設定だそうで時代設定はピッタリです。正面のナンバープレートは今回のために特別に用意された「無限」というプレートに交換しての運行でした。
「鬼滅の刃」ファンの人にとってはたまらないと思いますが、鉄ヲタにとっても鹿児島線を日中SLが走るというのは18年ぶりとのことでかなり熱いネタでした。激戦は必至だと思いましたが、指定が取れれば乗りたいなと思いました。
私の会社は今まで頑なに全員9時出勤でしたが、新型コロナの影響で7時~11時の間の30分刻みの時差出勤が認められるようになりました。これにより半休を取らずに出勤前にJRの駅に立ち寄って10時打ちに挑戦することができるようになりました。
ネット予約の普及や寝台列車の廃止に伴って、10時打ちが必要になる機会は以前よりかなり減っています。「サンライズ」の個室寝台だってネットで取れる時代です。ゆえに、首都圏の駅では10時打ちの事前受付を取り止めた駅がほとんどです。こういった激戦が予想される列車のきっぷを取るために10時打ちをしたい場合は、10時のタイミングで駅にいることが求められます。
職場から近く、通勤経路を大きく曲げずに、2窓以上ある駅に絞ると、条件の合う駅は1つだけでした。その1つしかない駅に9:30頃到着し、窓口に申込書を渡して10時を待ちました。待っている間に同じ列車の指定券を求める同業者が現れましたが、先客(=私)がいると分かると何やらブツブツ文句を言って消えていきました。せっかく2窓あるんだからここで待てばいいのに...などと余計なことは言いませんでした。
熊本発が8:35と朝早いので、熊本から乗るには熊本に前泊するか、早朝に熊本入りするかのいずれかになります。なので、久留米や鳥栖から乗ろうとする人も少数いると予想しました。そこで、第一希望は熊本→博多としたものの、保険に第二希望で熊本→久留米と書いて申込書を渡しました。
そして、予想が当たりました。片方の窓をジパング爺が塞いでいたため、1窓で10時打ちしてもらいましたが、第二希望で取れました。この駅では何気に2連勝です。JR九州のネット予約は10時のタイミングでアクセス急増で固まってまるで使い物にならなかったので、10時打ちに賭けてよかったです。
ヤフオクでは直後から「SL鬼滅の刃」の指定券が出品され、1枚840円の指定券が1枚45,000円、2枚7万円という法外な値段で落札されていました。6年前の「ブルートレイン信州」で520円の指定券が4万円で落札された事例があり、高騰率ではそれに迫るものです。ちなみにその出品者は転売の常習行為が発覚し東京都の迷惑防止条例違反で婚約者どもども逮捕されています。売る方も買う方も問題ですが、利益ばかりを優先してこういうのを野放しにしているサイトの方がもっと問題だと思います。
10月末に九州出張があったので、そのまま自腹で滞在延長し「みんなの九州きっぷ」を利用して、予習がてら11月1日の「SL鬼滅の刃」運転初日を見に行きました。
建設費をケチったのか、高架化された在来線の熊本駅のホームは非常に狭いという構造的欠陥はあるんですが、発車50分前で入線を待つギャラリーで賑わっていて、混み合っていました。混み合う熊本駅よりも、鹿児島線を走行する写真を撮りたいと思い、先行列車で隣の上熊本駅に移動しました。
本来のプレートとは異なる「無限」というこの列車専用プレートが取り付けられていましたが、締まった印象で悪くないなと思いました。上熊本駅には撮り鉄の他にこの列車を見に来た親子連れで20人ほどいたんですが、子どもが「無限列車!無限列車!」と興奮して叫んでいたのが印象的っだったとともに、すごい人気なんだなと改めて実感しました。
なお、上り勾配を上るための補機として編成の最後尾にDLが連結されていました。こちらは特に装飾されることなくノーマルでした。
2週間後、実際に乗車しました。ニュースなどで話題になった影響もあり熊本駅の混雑は2週間前より明らかに増えていて、ただでさえ狭いホームに人が密集し、身動きが取れないほどで、乗車口に行くのも苦労する状態でした。
車内は以前乗車した「SL人吉」と変わりませんでしたが、「鬼滅の刃」の単行本が置いてあったり、炭治郎柄の額がさりげなく飾ってありました。また、サボや号車札も専用のものが用意されていました。
観光キャンペーンなどで単発的にSLが運転される際にも沿線住民が多く集まる光景は珍しくないですが、どこか動員された感があり、それは乗客の側からも何となく察知できます。
ところが、この「SL鬼滅の刃」に関してはそういう動員されている感がまったくなく、登場人物のコスプレをした子供も多く見かけ、本当に無限列車を見たい人が自然発生的に集まったように見えました(駅での密集ぶりは今のご時世でちょっといただけないなと思いましたが)。今までいろいろな列車に乗ってきましたが、間違いなく一番の人出+盛り上がりでした。アニメの影響力はすごいですね。
「SL鬼滅の刃」は11月の運転を終えるとSLがすぐ小倉総合車両センターに入場するため、以降の運転はないと聞いていました。ところが、12月11日になって、12月19・21・23・25・27日の5日間の追加運転が発表されました。
指定席の確保には困難を極めましたから、乗りたかったという声は相当数集まり、JR九州も入場のスケジュールを再考せざるを得なかったのでしょう。また、転売対策として発表から運転まで日数をわざと短かくしたのかなと想像しました。
【オマケ】
久留米での降り際にJR九州の方と少し話をしました。
私:こんなに盛り上がってるなら復路(熊本行き)も営業運転すればよかったのに。
九:転車台がないからできない。運転できる箇所が限られる。
私:JR東みたいに復路は「DL鬼滅の刃」での運転もアリだったんでは?
九:したかったが、DLは(鬼滅の刃の)制作会社の許可が下りなかった...
ってな感じでわれわれが知り得ぬ大人の事情もあったようです。制作会社は作品の世界観を大事にしたいでしょうから、そういう判断は理解できます。まぁ「鬼滅の刃」でなくとも、また九州のどこかでSLが走るところを見てみたいもんです。鉄ヲタ的には復路がDLでも全然問題ないです。