四国まんなか千年ものがたり
◆種別:特急
◆区間:多度津~大歩危
JR四国の「四国まんなか千年ものがたり」(以下「千年ものがたり」)は「伊予灘ものがたり」に続く第2弾の観光列車として2017(平成29)年4月より多度津~大歩危間で運行を開始しました。
この運転区間は吉野川の風景や大歩危峡・小歩危峡の渓谷が楽しめる区間です。以前は不定期にトロッコ列車が設定されており、観光列車を設定すれば集客が期待できるという勝算があって設定したんだと思います。
「伊予灘ものがたり」はキハ47系の改造車で快速列車だったのに対し、「千年ものがたり」は特急型車両のキハ185系を改造し全車グリーン車指定席の特急列車で運転されています。
注目は2両目です。2枚の写真を見てわかる通り、左右で色が白と青と完全に違う色に塗り分けられています。1号車(緑)が「春萌(はるあかり)の章」、2号車の青が「夏清(なつすがし)の章」、3号車(赤)が「秋彩(あきみのり)の章」、2号車の反対側の白が「冬清(ふゆすがし)の章」という具合に車体の外観で四季の移ろいを表現しています。2号車の色を左右で塗り分けることによって夏と冬を表現しているというわけです。
多度津駅で土讃線特急と岡山・高松方面の特急を乗り継ぐ場合は特急料金・グリーン料金が通算できる特例がありますが、「千年ものがたり」については特例から除外されています。「特例の特例」みたいな状態です。また、多度津~琴平間だけの乗車はできず、必ず大歩危発着である必要があります。
最新のダイヤは以下の通りです。下り列車は「そらの郷紀行」、上り列車は「しあわせの郷紀行」という号数ではない列車名になります。
そらの郷紀行 | しあわせの郷紀行 | |
---|---|---|
10:18発 | 多度津 | 17:14発 |
10:26発 | 善通寺 | 17:01発 |
10:34着 10:48発 |
琴平 | 16:50発 16:31着 |
↓ | ↑ | |
12:48着 | 大歩危 | 14:21発 |
坪尻 阿波池田 |
ドア開放駅 | 阿波川口 阿波池田 坪尻 讃岐財田 |
時刻表上は琴平~大歩危間はノンストップですが、実際は運転停車の際にドア開放して車外に出られる駅があります。上下とも秘境駅として有名な坪尻駅で降りられます。
坪尻駅は香川県境に近い徳島県三好市にあります。谷底にあるスイッチバック駅で、最寄りの集落から徒歩30分かかります。駅周辺に道路はなく列車以外で行くことは困難です。その列車でさえも定期列車は上り4本、下り3本の普通列車が停車するのみです。
集落の近くに道路が整備されたため、利用客はほとんどいなくなっていました。坪尻駅の最後の定期的な利用客だった爺様は7年前に亡くなっているので、定期的な利用客はゼロです。
以前は駅舎の周りが草ボーボーで駅舎もさほど手入れされておらず秘境駅らしい雰囲気が漂っていたんですが、「千年ものがたり」が走るようになってからはきれいに草が刈られ駅舎も定期的に掃除が入っているようで秘境駅感は薄れました。
上り下りそれぞれの特急券です。もともとの列車名が長い上に号数もないので、派手に略されています。また、「千年ものがたり」の専用のチケッターもあります。アテンダントにお願いすると捺してくれます。
「千年ものがたり」には食事付きプランがあります。「食事予約券」を購入する必要があり、JR四国・西日本・東日本はみどりの窓口や旅行センターで取り扱いがあります。他社では取り扱いがないのでJR四国の「旅の予約センター」に申し込む必要があります。「食事予約券」購入時には特急券の座席の情報が必要になります。
「食事予約券」は乗車4日前まで発売です。「旅の予約センター」は郵送の手間があるため10日前までです。食事の準備が必要なため締切が早いのは仕方ないと思いますが、今回の私のように2日前に運良く列車の指定が取れてしまうと、車内での食事はあきらめざるを得ず、大歩危駅前の「歩危マート」に駆け込むしかありません。
土讃線の大歩危峡・小歩危峡は「南風」や「しまんと」では高速で通過してしまいますが、「千年ものがたり」では徐行するのでゆっくり渓谷の景色を楽しむことができます。特に小歩危峡を見下ろす景色は列車からしか見られないとのことで、晴れていれば必見です。紅葉の時期はさぞかしいい景色だと思います。
2回目に乗車した3年前は坪尻駅最後の利用者の爺様の孫が「千年ものがたり」のアテンダントとして乗務していました。祖父ゆかりの駅を通る観光列車で働ける喜びを語っていたのが印象的でした。この列車にはそんな「ものがたり」もあったりします。