定期券用ウィークリー料金券
常磐線特急が全車指定席化され今のような「新しい着席サービス」を導入したのは2015(平成27)年3月のダイヤ改正のタイミングでした。
それまで発売されていた「ひたち回数券」や「フレッシュひたち料金回数券」といった特急回数券や、定期券利用者向けで1ヶ月間特急列車自由席が利用できる「定期券用月間料金券」(以下「月額料金券」)もそのタイミングでの発売終了が発表されました。
しかし、後者については定期券で特急を利用していた通勤客に波紋が広がりました。当初、「月間料金券」の代替商品が用意されなかったため、大幅な負担増となりそうだったからです。
今まで特急列車を「月額料金券」で安く利用できていて、それ前提で常磐線沿線にマイホームを構えて東京に通勤していたであろう人も多くいるのに、JR側の一方的な制度変更によって「月額料金券」がなくなって負担が増えれば生活の前提が崩れます。JR東日本はそんなことにも想像力を働かせることができなかったのか、それとも増収を優先して確信犯的に潰そうとしたのかは今となっては分かりません。
最終的に茨城県の副知事が登場し、JR東日本に対応するよう直談判した末に、「月額料金券」の代替となる「定期券用ウィークリー料金券」(以下「ウィークリー料金券」)が発売されることになりました。
「ウィークリー料金券」はその名の通り7日間有効で、定期券と同時使用を条件に上り・下りそれぞれ5回ずつ特急列車指定席が利用できます。単純に7日間で10回とならないのが普通の回数券との大きな違いです。設定区間は以下の3区間です。
- 品川~上野⇔牛久~石岡
- 品川~上野⇔友部~日立
- 柏⇔石岡~勝田
平たく言ってしまえば、上野から51~100Kmと101~150Km、柏から51~100Kmの区間です。
こちらが「ウィークリー料金券」の現物です。7日間有効の上り券と下り券の2枚に分かれ向きが指定されていて、それぞれで5回利用できるようになっています。10回使える回数券ですが、券片はこの2枚だけです。
定期券と同時使用に限り有効なので、おそらくみどりの窓口での発売になろうかと思います。左上に白抜きの「定」という印字がされるとともに、記名人本人限り有効なので上り券には記名欄もあります。ただ、私の手持ちの何枚かはいずれも無記名でした。指定の席に座っていれば車内改札できっぷを見に来ることはないですから、わざわざ記名しないのかもしれません。
ここで2015年時点での価格の比較をしてみます。「定期券用月額料金券」は1ヶ月間乗り放題なので、60回利用した場合(毎日)と40回利用した場合(月20日)に分けて比べてみます。
ウィークリー 料金券 |
定期券用 月間料金券 |
フレッシュひたち 料金回数券 |
||
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利用設備 | 指定席 | 自由席 | ||
発売形態 | 7日間5往復 (10回) |
1ヶ月間乗り放題 (60回/40回) |
1ヶ月間有効 (4枚綴り) |
|
上野~石岡 | 発売額 | 8,140円 | 19,200円 | 2,280円 |
1回あたり | 814円 | 320円/480円 | 570円 | |
上野~勝田 | 発売額 | 10,460円 | 36,600円 | 2,880円 |
1回あたり | 1,046円 | 610円/915円 | 720円 |
「ウィークリー料金券」と「定期券用月額利用券」の40回の1回あたりの価格を比べてみると、利用設備が自由席から指定席に変わったこともあり高くなっています。特に上野~石岡間については1回あたり480円が814円になり、往復で668円の負担増です。1ヶ月だと約15,000円で、年間で18万円です。これを機に特急通勤を減らしたりやめたりした人もいたかもしれません。
7日間5往復という設定については、使いづらそうだなと感じます。週2日休みだとすると、毎日往復必ず利用する必要があります。そこに祝日や休暇が入ってしまうと必然的に余らせてしまいます。そういう場合でも記名人しか利用できないので、他人への譲渡はできません。
以前、金曜夜の土浦駅でブツブツ文句を言いながら「ウィークリー料金券」を使って翌週分の指定券を発券してるオッサンを見かけました。全車指定席化されたので、いちいち指定席を発券しなければならないのは面倒だと思います。
「旧えきねっと」ではwebで予約して駅の指定席券売機で引き換えることができたんですが、今年6月27日からリニューアルされた「新えきねっと」ではそれができなくなったため、面倒くささに拍車がかかったと思います。
個人的にはこの回数券はやめて、「えきねっと」のチケットレスサービスと統合してはどうかと思います。「えきねっと」と連携したJREポイントに紐づけられたSuicaがあれば、定期券情報も分かるはずですから、定期券区間内で特急列車を利用する客に対しては利用回数に応じて還元するJREポイントの率を上乗せすれば回数券の代わりになります。貯めたJREポイントは次のチケットレス予約の決済に充当することもできます。
そうすれば、利用客にとってはいちいち指定券を発券する必要はないですし、JREポイントの有効利用もできますし、7日間で片道5回ずつ10回という使いづらい縛りもなくせます。JRにとってもみどりの窓口で「ウィークリー料金券」を発券する手間が省け、「えきねっと」やJREポイントの利用促進になるので、磁気定期ユーザーときっぷヲタ以外にはいいことづくめの話だと思います。
【補足:2024/2/18】
「定期券用ウィークリー料金券」は2023年3月末で発売終了しましたのでカテゴリーを追加しています。代替商品はなく、プレスリリースには「何卒ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます 」とだけ記載されています。