WEST EXPRESS銀河(山陽)
◆種別:特急
◆区間:大阪~下関
JR九州の「ななつ星in九州」を皮切りに豪華観光列車で観光地を周遊し、数日で何十万円もするクルーズ列車が注目を集めています。JR東日本の「四季島」「カシオペア紀行」やJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」なんかもその一例です。
そんな中、JR西日本が「新たな長距離列車」の構想を発表したのは2017(平成28)年6月のことでした。2020年の東京オリンピック前までにクルーズ列車よりも安く気軽に利用でき、座席だけでなくグリーン個室や普通車のコンパ―トメントとなど多様な設備を用意し、京阪神と西日本の観光地を結び、車内では沿線の食べ物や酒が楽しめるような列車を運行するという内容でした。
ほどなくして、その車両の種車が117系であることが判明しました。古さと直流電化区間しか走れない点は気になったものの、手頃な価格で多様な設備が用意されるとのことで、運行されたら試しに乗ってみたいなと思いました。
列車名は「WEST EXPRESS銀河」となり、昨年のGW明けから京都~出雲市間で運行開始する予定でした。e5489で事前受付まで行った状態でしたが、緊急事態宣言が発出されたことにより延期となり、結局運行開始は9月までずれ込みました。当面はe5489での個札での指定券の発行は行わず、日本旅行主催のパックツアーでの抽選で発売するとされています。
個札の発売まで待つつもりでしたが、試しに日本旅行のパックツアーも申し込んでみました。今年1月乗車分を昨年10月に募集していたと記憶しています。そして、どうせ当たらないと思って応募したことすら忘れていた11月末になって当選通知が飛んできました。
出発までの間に緊急事態宣言が再発出されたり、「GoToトラベルキャンペーン」が適用されなくなりツアー代金が予定の倍になるという想定外の事態はありましたが、せっかく8倍の抽選に勝ち抜いて当選したので乗りたいという欲求が勝り、乗ってきました。
代金決済後に送られてきた乗車票です。なぜか「おとなびジパング銀河」になっています。まだ「おとなび」でも「ジパング」でもないですがね...。
列車名は利用設備によって分けられているようで、ファーストシートは「銀河(山陽)ファースト」という表記になっています。ファーストシートに是非とも乗りたかったわけではなく、競争率が低そうなところを狙ったらたまたま当たりました。
私が乗車した日の行程表記載のダイヤは以下の通りでした。
WEST EXPRESS 銀河下り |
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大阪 | 7:19発 |
三ノ宮 | 7:44発 |
姫路 | 9:47発 |
↓ | |
福山 | 13:16着 14:02発 |
三原 | 14:38着 |
西条 | 15:15着 |
広島 | 15:49着 |
宮島口 | 16:22着 |
岩国 | 16:45着 |
徳山 | 18:00着 |
新山口 | 18:42着 |
下関 | 19:45着 |
福山駅ではおもてなしの時間がありました。他にも停車駅は多いですが、乗客が降りたらすぐ発車する駅が多く、車外に出られる駅は岡山・三原・広島ぐらいだったと思います。笠岡駅の30分を始めこの他に運転停車がありましたが、車外には出られませんでした。
あと、この列車は急ぐ旅ではないので、個人的には景色のいい呉線経由で走って欲しかったなというのはあります。
ファーストシートは下関方先頭車の1号車です。2人用ボックス席が左右に4つずつあり、定員は16人です。テーブルを壁側に格納して座席の背もたれを倒すとフルフラットにもなり、足を伸ばしたり寝転がったりして車窓を楽しむこともできます。
コンセントやUSBポートは1人1つずつ完備されていて、長時間の乗車でも電源問題に悩まされることはありません。
ファーストシートの運転席寄りは専用のラウンジになっています。ここにいれば先頭車かぶりつきが好きなだけ楽しめます。私が乗車した日はファーストシートの乗客が4人しかいなかったので競争にはなりませんでした。
2・3号車には2-2列の普通車指定席があり、一人利用に適しています。3号車のファミリーキャビンや2・5号車のクシェット(≒2段式寝台)はグループや家族連れにピッタリで、117系をここまで徹底的に改造し、多様な設備を用意して様々な客層に対応しているのには感心しました。
車内外にはかつて山陽線を走った寝台特急のヘッドマークが散りばめられており、オマージュのようなものを感じました。
大阪~下関間で12時間半の長丁場でしたが、停車駅で外に出たり、個性的な車内を見て回ったり、座席をフルフラットにして寝転がって車窓を眺めたりして、退屈しませんでした。
柳井付近で寝転がって海を眺めていると、かつて廃止間際の寝台特急「あさかぜ」に乗って同じ海の朝焼けを見たことをふと思い出しました。
私が乗車した日の乗客数は三ノ宮発車時点で20人前後で、ガラガラと言ってもいい状態でした。コロナ対策で定員を減らしてたところに、緊急事態宣言で外出を自粛したり、「GoToトラベルキャンペーン」の停止延長で追い銭払うのが嫌というキャンセルも出たようです。乗客にとってはとにかく空いていて非常に快適でしたが、主催した日本旅行にとっては大赤字だったと思われます。
「WEST EXPRESS銀河」は3月11日で大阪~下関間での運行を終えました。その後、3月26日~6月27日は京都~出雲市間、7月16日~12月22日は京都~新宮間で運転され、年明けからは3月10日まではまた大阪~下関間で運転される予定です。当初予定されていた個札での発売は未だなく、旅行商品で発売される状態が恒久化ししそうな感です。
今度は山陰や紀南に行く列車にも乗ってみたいものです。