JR東日本盛岡支社は今年8月の大雨で被災し不通となっている津軽線・蟹田〜三厩間について年明け以降に青森県を始めとする沿線自治体と廃止を含めた協議を行いたいという考えを示しました。
津軽線は1988(昭和63)年の青函トンネル開業に合わせて青森〜新中小国信号場間が電化されていて、今回の存廃協議の対象を正確に表現すると非電化区間の新中小国信号場〜三厩間です。仮にこの区間を復旧させるとなると、4ヶ月の工期と最低6億円の費用がかかるそうです。
JR東日本が先月公開した利用の少ない線区の情報開示によると、2021年度の津軽線(中小国〜三厩間)は600万円の運賃収入に対し営業費用が5億9,400万円で差し引き5億8,700万円の赤字とのことです。要するに利用客が減っていて毎年6億円の赤字を出す路線を6億円かけて復旧させますか?という協議です。
ところで、津軽線振替輸送の情報を調べている中で気になるものを見つけました。JRが用意する代行バス(3往復)の他にJR東日本の子会社が運営する「わんタク」というデマンド型タクシーの紹介がありました。
代行バスは朝夕にしか設定がありませんが、「わんタク」はその間を埋めるように日中の10時から15時半まで30分間隔で設定されています。蟹田以北の津軽線に沿うように利用エリアが設定され、乗車の30分前までに予約すればOKです。そして、振替対象区間に有効な乗車券類を持っていれば振替輸送として利用できます。振替輸送でなくとも大人1回500円(外ヶ浜・今別町民300円)はで利用できるようです。
個人的には「わんタク」を蟹田駅周辺以外からも利用できるようにし、運用時間をもう少し拡大し、費用面で持続可能な形で運営することができれば、津軽線より便利な交通体系を構築できるような気がします。この是非は地元がどう判断するかに尽きるんですが…。
津軽線は直近で昨年乗車していますが、今回存廃が取り沙汰されている非電化区間は数年ご無沙汰しています。
以前は新青森から三厩まで臨時の快速「リゾートあすなろ竜飛」号が運転されていて、竜飛方面への誘客に力を入れていた時期もありました。それらはいつしか設定されなくなり、1日5往復の列車で100人ほどの客を運ぶ地域輸送するだけの路線になっていました。
その地域輸送も沿線の津軽浜名駅のすぐそばにあった青森北高校今別校舎(分校)が2019年から募集停止し今年3月で閉校になったので、頼みの通学客はさらに減っています。さらにCTC化によって唯一の有人駅であった三厩駅も2019年5月末で無人化され、蟹田~三厩間はすべて無人駅となりました。1面2線だった三厩駅構内は棒線化され、夜間停泊用の車庫はなくなりました。
昨年3月のダイヤ改正からキハ40系からGV-400系に置き換えられ、今年3月のダイヤ改正から全線でワンマン運転が始まりました。営業費用が5億9,400万円というのはワンマン運転を始める前の2021年度のものだったので、今年度は少しは圧縮できているのかもしれませんが、大きく減ってはいないと思います。
今回の協議の進め方は岩泉線を廃線にしたときと同じ手口だと思います。ただ、その時と状況が違うのはコロナ禍による乗客の減少でJR東日本に限らず鉄道会社の経営が苦しくなっていて、値上げや大赤字路線の廃止に対する利用客のアレルギーが以前ほど強くないことです。沿線自治体は揃って鉄道維持・早期復旧という立場で協議に臨むようですが、どう決着するのか注目しています。