続・吾輩はヲタである

JR券をメインとしたきっぷのブログ

美祢線BRT転換へ

 2023年7月の豪雨災害で全線不通となっている美祢線が鉄道での復旧を断念しBRTに転換されることがほぼ決まりました。沿線三市(山陽小野田・美祢・長門)の市長と山口県知事がBRTでの復旧に合意したそうです。

美祢線の列車:美祢線・南大嶺駅 2021/4/28

 JRの鉄道路線がBRT化されるのは2011年3月に東日本大震災の津波で被災した気仙沼線(柳津~気仙沼間)、大船渡線(気仙沼~盛間)、2017年7月の九州北部豪雨で被災した日田彦山線(添田~夜明間)に続く4例目になります。路線全体がBRT化されるのは美祢線が初の事例です。

 もともと赤字だった路線が災害によって被災し、鉄道での復旧を求める地元自治体に対しJRが赤字を理由に復旧を渋り、議論が平行線を辿り時間ばかりが過ぎていく中で、しびれを切らせた地元自治体側が渋々BRTを受け入れるという構図は共通しています。

 国鉄が分割民営化された経緯を知っているとこういうやり方に複雑な思いはありますが、JR本州三社と九州は株式上場によって100%民営化されてしまったのでもはや口出ししようがないのでしょう。

 まさにJR西日本にとってはしてやったりで、被災した赤字路線を格段にコストが安上がりなBRTによって「仮復旧」させるという屁理屈とも言えるスキームを作ってくれたJR東日本には足を向けて寝られないでしょうね。


 これまでBRT化された3路線(気仙沼線・大船渡線・日田彦山線)はいずれも地方交通線でしたが美祢線だけは幹線で、幹線からBRTに転換されるのも初の事例です。

厚保駅を発車する美祢線の列車 2019/8/25

 1981(昭和56)年4月に幹線と地方交通線との分類が行われた際に、美祢線には石灰石や炭酸カルシウムを運ぶ貨物列車が多く走っていました。貨物輸送の実績で美祢線は幹線に分類されましたが、肝心の貨物列車が2013年までに全廃され旅客列車だけになり実態と合わなくなっていました。

 美祢線の2022年度の輸送密度は377人/日でした。1980(昭和55)年に成立した国鉄再建法では旅客輸送密度4,000人未満かつ貨物輸送密度が4,000トン未満はバス転換が適当と規定されました。機械的にその基準にあてはめると美祢線はその基準の10分の1以下で、時代が時代ならとっくの昔にバス転換されていておかしくない数字でした。

美祢線の簡易委託駅で発売されていた乗車券

 美祢線の中間駅は国鉄末期の昭和60年頃までは板持駅を除きすべて駅員配置の有人駅でした。その後多くが簡易委託に移行し、簡易委託駅は令和を迎えた2019年9月の厚保駅を最後にすべて簡易委託が解除されました。唯一の業務委託駅かつみどりの窓口設置駅で残っていた美祢駅も2021年5月末で無人化され中間駅できっぷを売る駅がなくなりました。

 なので、きっぷヲタ的にはBRT化されたところで、今のうちに行っておかなければいけない駅はないと思っています。

 ただし、これまでの過去事例から判断すると、BRT化されるとおそらく乗車券の経由表記が変わります。なので、「美祢線」という経由表記のきっぷが欲しければ代行輸送をやっている今のうちに買っておくのが吉でしょう。


宇部興産専用線の廃線跡:いずれも美祢市内 2021/5/28

 2021年時点で美祢駅周辺にはかつて貨物輸送で使用された宇部興産の専用線が残っていました。1998年にトラック輸送に切り替えられて廃止されましたが、廃線から20年以上経っても線路や踏切は撤去されず残っていました。何か意図があって残していたのか今さらながら気になるところです。