最後の銀河
(大船駅発車案内)
年度末に余った有給休暇を無理やり消化すべく「銀河」→「あかつき」→島原鉄道南線→「なは」という鉄ヲタ三昧の九州クレイジー旅行を企画し、JR西日本の電話予約で指定まで押さえていたんですが、諸事情あって止めざるを得なくなりました。本当は全部取りやめるつもりでしたが、以前書いたように「銀河」の下りには乗りたかったので、直前まで迷った末に「銀河」だけは払い戻さず乗ってきました。
出発予定は3月7日でした。発売日の2月7日の昼過ぎに空席照会をしてみたら、なんと全席満席でした。廃止までは1週間あるのでB寝台なら取れるだろうと踏んでいた私が甘かったです。重複分のキャンセルが出ていることを期待して、その日の帰りに東京駅のJR東海ツアーズの窓口に行きました。ここは東京駅で今でも唯一熱転写のマルス券が購入できるところです。
窓口のおねえさんはすばやく入力し、一気に2枚発券しました。意外や空席があったことを喜んだと同時に、「1枚でいいんすけど…」と思っていた私におねえさんは2枚のきっぷを見せながらこう言いました。
係:「現時点で2席空きがあったんですが、こちらが喫煙の上段で、こちらが禁煙の下段になります。下段の方がよろしいですよね?」
私:「…そうですね」
意外な操作に驚きましたが、人気列車の残席がわずか2だったので、取られる前にまずはあるだけ押さえたんでしょう。プロとして鮮やかな状況判断だったと思います。もちろん喫煙の上段はすぐに戻していました。決済が済んできっぷを渡される時に「お気をつけて行ってらっしゃいませ」と言われた日にはちょっと惚れそうになりました(爆)
きっぷを見ての通り大船駅の発車は日付が変わる間近なんですが、そんな夜遅くにも関わらず発車の20分も前から多くの撮り鉄が向かいのホームに待機していました。ただ、いくら金曜の夜とはいえ中学生っぽいのが混じっていたのはいかがなものかと思いましたが…。
車内改札はほどなく済みました。車内はB寝台の上段が3~4席空いていた以外は指定券の売れ行きどおり埋まっており、廃止1週間前に相応しい混雑ぶりでした。普段からこれだけ乗っていれば廃止になることもなかったんでしょうが、今さらそんなこと言っても遅いですね…。
(小田原駅発車直後)
大船~小田原間で日付が変わります。小田原駅は通勤客や快速「ムーンライトながら」を待つ客で時間の割に人が多くいました。「銀河」目当ての人は10人弱はいました。私は発車した車内(最後部)から流れゆく小田原駅を撮影してみました。小田原停車はわずか1分だったので、車両の写真は撮れませんでした。そこで2分停車の熱海駅で狙ってみることにしました。
熱海駅で撮っている人はさすがにオッサン1人だけでした。巨大な三脚を持って小走りで移動していたので邪魔で危なっかしかったですが…。
熱海駅を発車した頃になるとさすがに睡魔に襲われました。寝床を作って横になってはいたんですが、上の寝台から漏れ聞こえる強烈ないびきが気になって眠れませんでした。当人は気持ちよく寝ていたので気づいていないでしょうが、不幸にも近くの寝台で乗り合わせてしまった人には大迷惑です。開放型寝台だからなおさらです。例えるなら豚の鳴き声を一晩中聞かされているような感じでした。列車の揺れや走行音は気にならないんですが、人工的かつ不規則な音の方がどうしても気になります。向かいの上段寝台に寝ていた人も相当いらついていたようでした。睡魔がいびきに勝つのには思いのほか時間がかかり、浅い眠りのまま朝を迎えました。
(京都駅停車中)
米原駅を到着した辺りはまだ真っ暗でしたが、徐々に空が薄明るくなってきました。京都駅で降りる人が準備を始め、車内が騒がしくなりました。京都駅で降りると九州から来る「あかつき」・「なは」の撮影ができたんですが、迷った末に私は「『銀河』で大阪に行きたい」という当初目標を貫徹することにしました。
京都総合車両所を横目に眺めながら降りる支度を始めました。定刻どおりの運転であれば京都~新大阪間で「銀河」と「あかつき」・「なは」の両方が撮影できるので、いわゆる「サントリーカーブ」など有名撮影地には朝早くから多くの撮り鉄がいました。
(淀川を通過)
新大阪駅を発車し、淀川を越えると終着が間近です。新大阪駅も大阪ではありますが、私個人的には淀川を越えて、HEPの赤い観覧車が見えて初めて大阪まで来たという実感が湧きます。
(大阪駅到着)
こうして7時間半の旅はあっという間に終わりました。土曜朝の大阪駅は静かでしたが、「銀河」の到着したホームは熱気に包まれていました。きっと最終日は熱気が殺気になるかもしれませんが…。同じホームには青森から到着した寝台特急「日本海」が停車していました。こちらは廃止は免れましたが、このダイヤ改正で2往復から1往復に減便されます。
最後に大阪駅のホームで撮影した「銀河」です。前面からまともに撮れたのは初めてかもしれません。京都駅で降りていたら撮れなかったと思います。通算で3回しか乗れませんでしたが、上り列車で東京駅に着いたのとはまた違った雰囲気がしていい思い出になりました。今回は週末だけあって子供連れの客が多く見られました。この子供たちが大人になる頃には寝台列車はどれだけ残っているのだろうか…とちょっと思いを馳せたりもしました。
この日は関西地区で鉄ヲタ活動+京都で寺社巡りをして、まっすぐ実家に帰りました。実家でくつろいでいたところ、ばあさんが「アンタこれに乗って帰ってきたんかね?」と言って、その日の中日新聞夕刊を私に差し出しました。
(3月8日の中日新聞夕刊)
唐突な帰省の理由を完全に見抜かれていました_| ̄|○
それはさておき、「銀河」は関東~関西を結ぶ列車であり、名古屋駅は下り列車は通過し、停車する上り列車でも「ついでに停まる」程度の扱いで、「銀河」と名古屋の関連性は薄いような感じがしています。それなのに名古屋では絶大な影響力を誇る中日新聞が夕刊トップで扱うなんて恐れ入りました。社会的なトピックとして判断したんでしょうか?
ともあれ、「銀河」はあと3往復の運転を残すのみなので、無事に最終日を迎えて欲しいものです。