JR東海は飯田線北部9駅の地元自治体に対して、今年3月末で子会社要員を撤収し無人化する方針を通告し、地元自治体による簡易委託に移行するかどうかの回答を求めました。手法はいつも通り強引な感はありますが、JR東海が営利企業である以上は常に合理化努力はしなければならないもので、仕方がない面はあります。
ただ、今回は「今後の路線維持のために」と飯田線存廃をちらつかせて迫ったのが過去と違うところです。こうなると地元も渋々受け入れざるを得なかったようです。
対象は南から順に上記の駅です。私はこれらのうち鼎駅だけは訪ねていました。鼎駅で発売されている記念きっぷは以前の記事で紹介しました。利用客は決して多そうには見えませんでしたが、委託の爺さんがいて、きちんと駅が維持管理されている印象を受けました。なお、無人化に伴って記念きっぷの発売は中止するようです。
結果として鼎駅を含めた赤字の駅が4月以降無人化されることが決まりました。言い換えれば飯田市と伊那市の対象駅が無人化されることになります。両市の市長がほぼ同じ主張をしていたのが興味深かったんですが、「きっぷの発売するだけの窓口要員に費用は掛けられない」というものでした。
逆に人件費を負担して4月以降も要員配置する駅の地元首長には、市や町の中心部が無人化されて埋没しかねないという危機感から、今回の件を機に地元が駅の運営に関与することによって駅を活性化拠点に位置づけ、人が集まるような拠点として活用していこうという表明が多く見られました。
おそらく飯田・伊那の両市は駅を単なるきっぷを発売するだけの拠点と捉え、他の市町は地域の活性化の起点となる場所という捉え方の違いがあったと思います。個人的には自分たちで費用やアイデアを出して駅を拠点とした地域の活性化策を考えていこうという方が共感できるし、前向きだと思います。まぁ、飯田・伊那の両市は無人化される心配のない直営駅があるので、それさえあればいいという意識が根底にあったのかもしれません。
これで4月以降の飯田線の営業体制は以下のようになります。
辰野を除く飯田線93駅のうち上記15駅を除く78駅が無人駅となっています。200Km近い長大路線ですが、JR東海社員がいる直営駅はわずか6駅です。簡易委託駅はいずれもここ2~3年以内に業務委託駅から簡易委託に移行した駅です。
定期券利用客に対しては、近隣の定期券発売駅までの運賃を無料にする措置があるようです。また、JRの社員が学校に出向いて通学定期の出張販売も行っていて、最低限の手当ては行っているように見えます。
(伊那松島駅の窓口と券売機)
ただ、回数券の利用客はどうしても不便を被ります。JR東海の駅で業務委託駅→簡易委託駅・無人駅への移行があると、自動券売機は必ず撤去してしまうので、回数券は購入しにくくなります。無人駅が増え、きっぷが買いにくくなっているので、券売機を継続して設置するなり、車掌やワンマンカーの運転士が車発機で回数券を発券する方法を検討してもいいように思います。