続・吾輩はヲタである

JR券をメインとしたきっぷのブログ

カートレイン

カートレインユーロ名古屋

◆種別:急行

区間:熱田~東小倉

 「カートレイン」とはそもそも何ぞやと言うと、自家用車を貨物として人間を客車に積んで、同じ編成を組んで同時に運んだ旅客・貨物混合列車です。要はカーフェリーの列車版といった感でしょうか。国鉄時代の昭和60年に汐留~東小倉間で運転を開始され、平成6年ごろまで盆暮れの繁忙期を中心に各地で運転されました。

 「カートレインユーロ名古屋」はそんなカートレインの一つで、熱田~東小倉間を夜行で運転されました。種別は急行列車で、客車はJR東海が当時保有していたジョイフルトレイン「ユーロライナー」でした。

Cartraineuronagoya (名古屋駅:昭和63年)

 手持ちの写真がなかったので、wikipediaから借りてきました。「ユーロライナー」の客車のカラーリングに合わせて専用機があり、編成美も楽しめる列車でした。専用のヘッドマークも取り付けられていました。

 熱田駅東海道線の旅客駅ですが、かつて貨物列車の発着があり貨物用ホームが残っていました。カートレインではそこで車の積み下ろしをしていたんだと思われます。また、東小倉駅鹿児島線・門司~小倉間にある貨物駅です。駅としては現存するものの、平成14年に開業した北九州貨物ターミナル駅に機能を譲っており、貨物駅としての実態はありません。

 カートレインを利用するには乗車人数分の乗車券+急行券と車両搬送料金が込みになった「カートレインきっぷ」を購入する必要がありました。発着地近辺の主要駅・旅行センターで取り扱いがありました。

H0183x

 これがその現物です。いわゆる特補です。「カートレインきっぷ」は購入時に車検証の呈示を求められ、車の登録情報も必要だったため、この当時はオンラインではなく台帳ベースで管理していたんだと思われます。「カートレインユーロ名古屋」に関しては積載可能台数が12台で、5ナンバーサイズのセダンタイプの乗用車に限定されました。当時の時刻表には「クラウン、マークⅡハードトップ、クレスタ、セドリック、グロリア、ルーチェサルーン、コスモサルーン等は残念ながら積載できません」という注意書きもあります。列車には自動車1台に付き6人まで乗車できました。

 ちなみにこの券は私が使ったわけではなく、当時同級生だったS君がくれたものです。S君の一家は車をカートレインに載せて定期的に北九州へ帰っていました。当時の私にとっては九州はまったく未知の世界であり、いつか行ってみたい憧れの地でもありました。この券は着駅の熱田駅発行となっていますが、この券をくれたS君の自宅は確か熱田区だったので偶然だと思います。

 「ユーロライナー」は4人用ないし6人用グリーン個室の客車でした。4人用個室利用時の値段は以下のような感じでした。

大人1人小児0人:38590円
大人1人小児1人:41610円
大人2人小児0人:45270円
大人2人小児1人:48620円
大人2人小児2人:51980円
大人3人小児0人:52230円
大人3人小児1人:55590円

 これだけの情報があれば大人:7000円弱、小児:3300~3400円程度、車両搬送料金:31300円程度と大まかに推測できます。この列車が急行列車のグリーン個室であることを考慮すると、人間の運賃は安いと思いますが、車両搬送料金が高いために全体ではやや割高感があります。

 3年前のリーマンショック後の世界的金融緩和により、投機マネーが原油投資に流れ込み深刻なガソリン高を引き起こしました。私は毎日車を使うわけではありませんが、1リットル160円というガソリン価格を見て車で遠出しようという意欲が完全に失せると同時に、「今でもカートレインが残ってたらなぁ…」と感じたことがあります。

 カートレインは渋滞がなく、ドライバーが長距離運転する負担も減ります。また、その間の温室効果ガスの排出もありません。現地でレンタカーを借りるのも結構ですが、小さな子供がいて公共交通機関を利用するのが憚られたり、旅先でもいつもの愛車を使いたいといったカートレインでカバーできそうなニーズはあると感じています。値段は全体的に少し安くすると同時に、3ナンバー車やワゴン車も積めるようにすれば、ガソリン高で環境保護が叫ばれている今の時代に案外受け入れられるように思います。

 もっとも、肝心の客車や貨車が往時ほど残っていないという大問題はありますが…。