JR≧IR連絡
北陸線・松任駅の券売機で購入したIRいしかわ鉄道(以下「IR」)への連絡券です。金沢から160円区間は東金沢駅相当の運賃です。IRはJR線との乗継割引の設定があるため、券面上部に「割引」の印字があります。
乗継割引はIR・JR両社の運賃の合算がJR単独時代の運賃の1.1~1.2倍程度の上昇に抑えるよう、石川県と関係市町村が出資した運行支援基金から支援を行います。区間によってIRとJR双方で割り引く区間とIRのみで割り引く区間に分かれます。
- 双方割引…松任・野々市・西金沢・中津幡・本津幡・能勢・宇野気
- IRのみ割引…大聖寺~加賀笠間、横山~和倉温泉
双方割引の区間は接続駅から10Km以内のJR駅までで、IRのみ割引の区間はそれ以上の区間です。
松任~東金沢間のJR時代の営業キロは12.0Kmです。JRの幹線の運賃に割り当てると240円になります。それがIR連絡になって乗継割引が適用された結果、230円とJR時代より10円安くなっています。JRから第三セクターに転換されて運賃が安くなった珍しい例です。
こちらのきっぷも東金沢着のJR→IRの連絡乗車券です。経由が「北陸・金沢・IRいしかわ」となっています。JR時代は580円だったものが乗継割引が適用されたことにより、同額のまま据え置かれています。
今のところ、JR時代からの激変緩和という目的は果たせているように見えます。ただし、運行支援基金には限りがあるでしょうから、今の乗継割引をずっと維持し続けるのはこれまた難しいような気がします。
IRとJRの乗継割引は割引後の運賃のみが記載されているだけで、どちらの会社がいくら割り引くかという情報がありません。そこで私なりに規則性を推測してみます。
まずは北陸線・大聖寺~西金沢間の主要駅とIR三駅の乗継割引運賃の考察です。太字の乗継割引額は一昨年10月に発表されたJR西日本のプレスリリースの資料からの抜粋です。資料中の「寺井」は駅名改称後の「能美根上」に読み替えています。
大聖寺 | 小松 | 能美根上 | 松任 | 野々市 | 西金沢 | ||
東金沢 | 乗継割引額 | 80 | 80 | 80 | 130 | 130 | 160 |
うちIR分 | 80 | 80 | 80 | 80 | 80 | 80 | |
うちJR分 | 0 | 0 | 0 | 50 | 50 | 80 | |
森本 | 乗継割引額 | 80 | 80 | 80 | 130 | 130 | 160 |
うちIR分 | 80 | 80 | 80 | 80 | 80 | 80 | |
うちJR分 | 0 | 0 | 0 | 50 | 50 | 80 | |
津幡 | 乗継割引額 | 30 | 30 | 30 | 80 | 80 | 110 |
うちIR分 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | |
うちJR分 | 0 | 0 | 0 | 50 | 50 | 80 |
まず、大聖寺・小松・能美根上はIRのみの乗継割引ですので、IRの割引額が確定します。それによると東金沢・森本発は80円、津幡発は30円ということが分かります。IRのこの割引額が他の区間でも変わらないとすると、JRの割引額が推測できます。松任・野々市発が50円で、西金沢発が80円でいちおう辻褄は合います。赤字の値が私の推定値です。
そして、同じように七尾線・本津幡~和倉温泉間の主要駅とIR三駅の考察してみます。
中津幡 |
能勢 | 宇野気 | 宝達 | 羽咋 | 和倉温泉 | ||
金沢 | 乗継割引額 | 110 | 110 | 80 | 30 | 30 | 30 |
うちIR分 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | |
うちJR分 | 80 | 80 | 50 | 0 | 0 | 0 | |
東金沢 | 乗継割引額 | 130 | 130 | 100 | 50 | 50 | 50 |
うちIR分 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | |
うちJR分 | 80 | 80 | 50 | 0 | 0 | 0 | |
森本 | 乗継割引額 | 130 | 130 | 100 | 50 | 50 | 50 |
うちIR分 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | |
うちJR分 | 80 | 80 | 50 | 0 | 0 | 0 |
こちらも中津幡・本津幡・能勢・宇野気はIR・JR双方割引で、宝達・羽咋・和倉温泉はIRのみの片方割引です。同様にIRの割引額は金沢発が30円、東金沢・森本発が50円ということが推測できます。そこからJRの割引額を割り出すと、中津幡・本津幡・能勢発が80円、宇野気発が50円ということで、こちらも辻褄が合います。
これを簡潔にまとめると、以下のような結論が導き出せます。
【IR~七尾線(津幡接続)】
- IR分…金沢発着は30円、東金沢・森本発着は50円
- JR分…中津幡・本津幡・能勢発着は80円、宇野気発着は50円
【北陸線~IR(金沢接続)】
- IR分…東金沢・森本発着は80円、津幡発着は30円
- JR分…松任・野々市発着は50円、西金沢発着は80円
会社間の境界付近の駅は二社合算により従前よりも運賃が跳ね上がるので、両社とも割引額が大きいです。また、利用状況を考慮したのか、IRの乗継割引は北陸線との乗継の方に手厚く設定されています。最初に紹介した松任~東金沢間については双方割引が適用されるため、合算運賃の360円から130円(IR:80円、JR:50円)割り引かれて230円となっています。
なお、前後にJR線を挟んだJR~IR~JRの通過連絡運輸の設定があります。この場合も乗継割引が適用されているようですが、さきほどの結論とは計算式が違うようです。気が向いたらまた考察してみます。