続・吾輩はヲタである

JR券をメインとしたきっぷのブログ

PayPay特急券

 JR九州で「PayPay特急券」なるものを発売しています。昨年1月から3月まで試験販売され、4月以降は本販売に移行しています。設定区間は博多~門司港・行橋間の在来線の自由席特急券で車内料金が適用される区間です。来月から博多~佐賀間でも利用できるようになる予定です。

博多駅のPayPayのQRコード 2023/8/15

 みどりの窓口や駅の券売機でPayPay決済で特急券が購入できるというわけではなく、駅のPayPay特急券のポスターのQRコードを読み込んでPayPayで決済をするというだけのものです。乗車区間によって決済金額が変わり読み込むべきQRコードも異なるので、間違ったQRコードを読み込まないよう注意する必要があります。

 ちなみに払い戻しは決済から2時間以内かつ決済した駅のみで取り扱うという利用者に対してかなり厳しい条件があります。特急券を買ったものの一本前の快速に間に合ったから結局特急は使わなかった…なんて場合、きっぷだったら着駅でも払い戻せますが、PayPay特急券はそうはいきません。また、乗り越しの場合は差額精算ではなく別途精算というのも厳しいです。

ソニック51号電光表示:博多駅 2023/8/15

 PayPay特急券は列車の発車時刻1時間以内から発車前まで決済したものでなければなりません。私は19:20発の「ソニック51号」に乗車したので18:20以降の決済であれば大丈夫です。列車が遅延した場合には定刻を過ぎても実際の発車前までに決済すればOKです。

PayPayの決済結果画面(加工済み・右は比較用)

 PayPayの決済結果画面(左)です。右は比較用です。本来「〇〇〇にお支払い △△△店」と決済先と店名が表示される部分に自由席特急券である旨と乗車区間が表示されています。車内改札の際にはきっぷの代わりにこの画面を車掌に呈示します。

 車掌は車内改札の際に揺れる車内でこの細かい灰色の文字を読み取って乗車駅の発車時刻から1時間以内に決済したかどうかを瞬時に判定するスキルが求められます。老眼の人にはちょっと厳しいですね…。

 この仕組みのJR九州のメリットは駅にポスター1枚貼っておけば、自動券売機も設置せず窓口の係員の手を煩わせることなく特急券を「発売」できることです。さらにPayPayアプリを利用しているので、自社のネット予約のwebサイトやアプリを改修する必要もありません。コストのことだけ考えると理にかなっています。

有価証券

 確かにJR九州にとっては都合のいい仕組みでしょうがどうも違和感があります。きっぷは有価証券ですが、あのPayPayの決済結果画面も果たして有価証券に当たるのか???という点です。個人的にはあれは有価証券ではなく領収書だと思います。

 「新幹線のきっぷをなくして買った時の領収書は持っているのに結局再度全額払わされた。JRは融通が利かない。サービスがクソ」みたいな話がtwitter界隈で定期的に観測されその都度袋叩きにされていますが、領収書がきっぷ代わりと認めてしまうとこの言い分を否定する根拠を失います。

 PayPay特急券の仕組みを導入するにあたって事前にJR九州の社内でリーガルチェック(法務確認)は行ったんだと思いますが、どういう整理をしたうえでこれでOKと判断したのかちょっと興味があります。

 あとPayPayを使ったことあれば分かると思いますが、あの決済結果画面は固定で動きません。悪意を持ってスクリーンショットを30分後の特急に乗った知り合いにLINEで送れば流用ができてしまいますし、パソコンの画像加工ソフトで決済日付を改ざんすれば別の日に再利用だってできます。

「スマえきアプリ」の使用中画面

 JR四国が開発した「スマえきアプリ」はアプリ内で事前にきっぷを購入し、自分で使用開始・終了の操作をする必要があります。使用中にはQRコード右の時刻がスマホの時刻と連動し薄緑の背景が斜めにスクロールするので、スクリーンショットの流用や日付の改ざんをしてもバレます。

 「スマえきアプリ」は不正利用対策も考慮しちゃんとアプリを作り込んでいますが、PayPay特急券はPayPayアプリの仕組みに丸乗りしたゆえにまったく考慮されていません。不正を働く人間が一番悪いのは言うまでもないですが、事業者側も良心に訴えるだけではなくそれを抑止するための最低限の仕組みは作っておくべきです。

 国内のコード決済の約7割を占めるPayPayに対応することで利便性向上を図るという意欲はいいと思います。アプリの使い勝手は悪くなりますが、不正利用対策として「JR九州アプリ」に「スマえきアプリ」と同様の機能を組み込んで、決済手段の一つにPayPayを追加した方が良い気がします。