こちらは昨年10月の消費税の10%増税に伴う運賃改定を挟んだ前後の同じ区間・同じ経路の乗車券です。
消費税増税分とJR北海道の赤字分を転嫁する運賃改訂だったので運賃は上がるはずですが、この区間では350円から270円と80円も値下がりしています。
平成4(1992)年7月に千歳線・南千歳~新千歳空港間を開業するにあたって、設備投資に充てるコストを利用客に転嫁するため、この区間を利用する場合は140円の加算運賃が設定されていました。他にこういった加算運賃の例として関西空港線、瀬戸大橋線、宮崎空港線が挙げられます。
開業来順調に利用が伸び、平成30年度には設備投資額(+支払利息等)の約90%を回収しました。昨年10月の運賃改訂では消費税増税分に加えて経営難であるJR北海道の運賃を値上げ分がベース運賃に転嫁されましたが、逆に加算運賃については140円から20円に下げるという大胆な決断をしました。
その結果、新千歳空港から主な駅までの運賃は以下のように変わりました。
新千歳空港から | 旧運賃 (140円加算) |
新運賃 (20円加算) |
変動額 |
---|---|---|---|
南千歳 | 310円 | 220円 | -90円 |
千歳 | 350円 | 270円 | -80円 |
北広島・追分 | 590円 | 560円 | -30円 |
苫小牧 | 680円 | 660円 | -20円 |
新札幌 | 880円 | 880円 | 0円 |
札幌・新夕張 | 1,070円 | 1,150円 | 80円 |
手稲 ・江別 | 1,210円 | 1,310円 | 100円 |
小樽・東室蘭 | 1,780円 | 1,910円 | 130円 |
旭川・帯広 | 3,380円 | 3,650円 | 270円 |
新千歳空港から近い駅については運賃の値上げ幅より加算運賃が120円引き下げられたメリットが大きく、運賃が値下がりしています。新札幌(営業キロ36~40Km)を境に運賃の値上げ幅の方が大きくなり、運賃が値上がりしています。
もし、加算運賃の値下げがなければ新千歳空港~札幌間は200円値上げの1,270円に、小樽までは2,000円超えの2,030円になり、心理的な割高感が増します。加算運賃の値下げによって激変緩和的な役目を持たせたのだと思いますが、経営が苦しいJR北海道がドル箱区間の運賃を一気に120円も下げたのは「やりすぎ」な感じがします(道庁や北〇道新聞など口しか出さない外野がうるさいのは否定しませんが)。
同区間の複線化や南千歳から空港を経由して苫小牧方面へ直通する新線の建設も検討されているようですので、そちらの建設費用に備えてもよかったように思います。