続・吾輩はヲタである

JR券をメインとしたきっぷのブログ

東京近郊区間再々拡大へ

 6月20日のJR東日本のプレスリリースで「長野県における Suica ご利用駅の拡大について」というものがありました。内容はタイトルの通りで篠ノ井線で松本駅までだったSuica利用エリアを松本~長野・穂高間各駅(23駅)に拡大するというものです。実施予定時期は2025年春以降としています。

2025年春以降にSuicaが利用できるようになる駅:JR東日本プレスリリースより引用(https://www.jreast.co.jp/press/2023/nagano/20230620_na01.pdf

 Suica利用エリアが首都圏から徐々に広がり松本駅まで達したのは2014年4月のことです。それから今日に至るまで長野県内で2番目に人口の多い松本では利用できて、県都長野では利用できないという状態が続いています。そういう現状についてやはり長野の人には不満が募っていて、早く利用できるようにして欲しいという要望は相当数あったんだろうなと察します。

穂高駅 2019/3/9

 大糸線の拡大エリアが穂高までというのは順当だと思います。穂高までの区間は利用客が多く有人駅も多いですが、穂高から先は徐々に利用客が減り無人駅が増えます。2014年4月に松本駅をSuica利用エリアに加えた時のように飛び地で穂高より北の信濃大町や白馬といった特急停車駅には拡大させてもいいように思います。

 今回拡大されるエリアは首都圏エリアに組み込まれ、SuicaにはICOCAのような距離制限はないので、Suica一枚で首都圏はおろか伊豆急線の伊豆急下田、宇都宮(東北)線は黒磯、常磐線は福島県の浪江まで行けるようになります。


 ただ、JR東日本のSuica利用エリア拡大に伴って懸念されるのは近郊区間の拡大です。東京近郊区間と称しつつも、拡大に次ぐ拡大で中央線は松本、常磐線は浪江まで広がり、とても東京とは言えない域まで広がっています。東京近郊区間内で完結する乗車券は当日限り有効で途中下車不可になります。

 JR東日本長野支社はネットメディア「乗りものニュース」の取材に対し「Suicaエリア拡大にあわせて、東京近郊区間は長野駅、穂高駅まで拡大されます」と答えています。2年後には東京近郊区間が長野やアルプスの麓の穂高まで広がることになります。

trafficnews.jp

 なお、そのことを紹介する上の記事中に「Suicaエリアの拡大と近郊区間の拡大は『不可分の関係』」という記述がありますがこれは誤りです。

 例えば現在JR西日本で大阪から福井までをICOCAなど交通系ICカードで利用した場合、JR東日本と同じく当日限り有効で途中下車不可です。しかし、きっぷで利用する場合は2日間有効で途中下車ができ、乗車手段によって効力が変わります。大阪近郊区間の北限はずっと近江塩津で、ICOCAが福井でも使えるようになってからも福井まで拡大されていません。決してICカード利用エリアの拡大と近郊区間の拡大は不可分な関係ではありません。

 むしろICカード利用エリアの拡大と近郊区間の拡大という結び付ける必要のない2つの事象を無理やり結び付けているのはJR東日本だけです。調べれば5分で分かるような簡単な確認をせずに不可分と書いた「乗りものニュース」はJR東日本の言い分を右から左に垂れ流して、そういう事情にさほど詳しくない読者を騙しています。

 首都圏から松本まで行く際に有効期間を延ばして途中下車したい場合、一つ先の大糸線・北松本駅まで買って東京近郊区間から外すというライフハックがあります。しかし、これも北松本駅が東京近郊区間に組み込まれることによって2年後には使えなくなります。

 このへんの乗車券も当日限り有効で途中下車不可になります。いずれも途中下車印はありませんが、途中で乗り降りしながら目的地に向かっています。

 旅行で鉄道を利用する場合は途中乗り降りしていろいろなところに寄ったり食べたりするのも楽しみの一つですし、他の公共交通機関ではできないメリットだと思っています。JR東日本はSuica利用促進に前のめりになるあまり、近郊区間の拡大という余計なことをやって利用客の選択肢を奪っています。

 コロナ禍で苦しいのはJR東日本だけではないと思っていますが、こうも値上げや不利益変更が続くと利用しようという意欲は減退します。まぁこういうやり方が気に食わなければ「利用しない」というのが利用客側にできる唯一の抵抗かもしれません。

 そう言えば10年前にもそっくりなタイトルの記事を書いてました。この時は東京近郊区間が長野まで広がるなんて想像もできませんでした。

www.imadegawa075.net