続・吾輩はヲタである

JR券をメインとしたきっぷのブログ

SL人吉転戦

SL人吉

◆種別:快速

◆種別:鳥栖~熊本

 肥薩線を走っていた「SL人吉」が今年5月から列車名はそのままで熊本~鳥栖間で運転されています。昨年7月の「令和2年7月豪雨」(いわゆる熊本豪雨)で肥薩線が不通となっていて本来の区間を走れないため、その遊休利用だと思います。

 昨年11月~12月に運行され大人気を博した「SL鬼滅の刃」は博多まで乗り入れましたが、今回の「SL人吉」は鳥栖発着に短縮されています。博多~鳥栖間は電車がひっきりなしに走っていて博多駅のホームもさほど余裕があるようには見えないので、SLをねじ込むのは厳しかったのかもしれません。また、今のご時世で博多駅にSLの見物客がたくさん集まって密ができることを嫌った可能性もあります。

 ダイヤは以下の通りです。「SL鬼滅の刃」は熊本発の片道運転で途中停車駅が鳥栖・久留米だけでしたが、「SL人吉」は往復運転で玉名・大牟田が追加され乗車機会が増えています。 

SL人吉号
(上り)
  SL人吉号
(下り)
10:50発 熊本 17:53着
 
11:32着
11:41発
玉名 17:11発
17:10着
12:14着
12:15発
大牟田 16:37発
16:30着
13:12着
13:13発
久留米 15:39発
15:38着
13:24着 鳥栖 15:27発

 「SL鬼滅の刃」は熊本発が8:35と朝早く、早起きが強いられるダイヤでしたが、「SL人吉」では2時間繰り下げられて使いやすくなっています。

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SL人吉号:鹿児島線・上熊本 2021/5/1

 今回は「鬼滅の刃」とのコラボはなく、プレートも「無限」ではなく普通に「58654」だったので、「鬼滅の刃」のファンはほとんどいなくなった代わりに、通常の観光列車の客層に戻っています。 

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SL人吉号:鹿児島線・鳥栖 2021/5/1

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DLけん引のSL人吉:鹿児島線・肥後伊倉 2021/7/23

 鳥栖駅にはSLを方向転換させる転車台がないため、往路(鳥栖行)がSL、復路(熊本行)がDLけん引で運転されます。

 私が乗車したのは熊本~鳥栖間の運転初日の復路でした。当初JR九州ネット予約で仕込んだんですが、すぐに満席になりました。しかし、4月下旬になって3回目の緊急事態宣言が発出された影響からか、目に見えてキャンセルが出始めて、当日は7割程度の乗車率でした。

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 特筆すべきは今回の「SL人吉」から指定席料金が840円から1,680円と倍に値上げされたことです。さすがに倍は極端ですが、SLはどうしても維持費がかかるので値上げ自体は理解できますし、他社でもやっていいと思っています。

 ただ、指定席料金は全区間固定なので、熊本~玉名とか大牟田~久留米とか短い区間だけ乗りたい場合にも同じ金額がかかり割高感があります。家族連れで駅に現れて5人中2人しか乗らず3人は駅で見送りという感じのグループもいくつか見ました。また、私の向かいの席の親子連れは鳥栖→熊本間の指定券を持っていましたが、実際に乗車したのは久留米→大牟田間だけでした。その前後の区間では死に席となり機会損失にもなります。

 同じ増収を狙うならば、急行列車にして指定席料金は840円のままで急行料金を徴収した方がよかったのではないかと思います。この方法だと実際に乗車する区間の指定券を買うでしょうし、短区間乗車における割高感は若干緩和されます。また、快速・普通列車しか利用できない「青春18きっぷ」や「旅名人の九州満喫きっぷ」の客からの運賃収入も期待できます。さらに急行列車という希少価値もあります。

 「SL人吉」の熊本~鳥栖間での運転は9月末までの延長が発表されました。肥薩線の被災から1年経つものの、JR九州は治水対策が決まらないことを理由に復旧の費用や方針を明らかにしていません。今年度中に鉄道で復旧させる場合の概算費用を出すそうですが、日田彦山線の経緯を見ているとひと悶着はあるでしょう。鉄道で復旧するにしても、熊本地震で被災した豊肥線の工期(3年1ヶ月)は超える見込みとのことです。

 概算費用が出てから方針決定までに2年、工期を短く見て4年と仮定しても、鉄道で復旧するとしたら2028年度以降になろうかと思われます。「SL人吉」を名乗りながら人吉を走れない状態が長く続きそうです。