みどりの券売機プラス
今年1月30日より東海道線・甲南山手と山陽線・須磨の両駅のみどりの窓口が閉鎖され、「みどりの券売機プラス」に置き換えられました。「みどりの券売機プラス」(以下「プラス」)とは何ぞや??と簡単に言ってしまえばJR西日本版の「Kaeruくん」です。
JR東日本の本家「Kaeruくん」は平成19年3月を最後に丸3年新設が止まっています。今後追加で設置されることはないでしょう。おそらく社内的にも「失敗作」として認知されているんだと思います。JR西日本はわざわざJR東日本の失敗作を真似してどうするんだ…思っていました。ただ、内心で思うだけで実際に使ってみなければ話は始まりません。他のきっぷ系のブログでは社線連絡の120mm券を出したものが散見されました。二番煎じでは面白くないので、GWに使う予定のきっぷを株主優待券で購入することにしました。
私が行ったのは山陽線・須磨駅でした。須磨駅には快速列車が停車して便利な上に、隣の塩屋駅までの海沿いを走る車窓の景色が気に入っていたため、いつか降りてみたいと思っていました。みどりの窓口は板で塞がれていて、その左手に「プラス」がありました。
外観は普通のMV30型の「みどりの券売機」と変わりませんが、右側にカメラと読み取り台が設置されています。「Kaeruくん」のように機械を新設したわけではなく、既存のMV30型に右側のカメラと読み取り台を追加しただけのようでした。ディスプレイには既存のMV30型機能のほかに、右下に「きっぷの購入に関するお問合せ」というオペレーターを呼ぶ緑色のボタンがあって、必要に応じて利用者が切り分けができるようになっています。
私が購入しようとしたものは以下のきっぷです。予め時刻を調べて必要事項を記入した申込書と株主優待券を一緒に読み取り台に置きました。全て普通車指定席の窓側を希望しました。
乗車券:5月2日 博多→直江津(山陽新幹線・新大阪・湖西・北陸線経由)
新幹線特急券:5月2日 のぞみ62号/博多→新大阪
特急券:5月2日 サンダーバード45号/新大阪→福井
特急券:5月3日 サンダーバード3号/福井→金沢
特急券:5月3日 北越3号/金沢→糸魚川
そして「きっぷの購入に関するお問合せ」ボタンを押します。色が地味なのとボタンの位置を右下の枠外に寄せていたため場所がちょっとわかりにくい感じがしました。
オぺ:「お待たせしました。担当○○です」
若い女性でした。音は「Kaeruくん」並に聞き取りづらいです。
私:「この申し込みで株主優待券使ってきっぷを買いたいんですけど」
オぺ:「はいわかりました」(そのまま数秒の沈黙)
オぺ:「株主優待券の確認が取れましたので、株主優待券を下にして申込書を上にしていただけますか」
どうやら画像を通じて株主優待券の真贋を見抜く仕掛けがあるようです。手で触ることができない以上、どうしてもリモートでも真贋を検知する仕掛けが必要になります。透かしかホログラムに紫外線か赤外線か何か非可視光線を照射しているのかもしれません。
オぺ:「お支払いは現金ですか?クレジットカードですか?」
私:「カードです」
オぺ:「4桁の暗証番号おわかりになりますか?」
私:「わかります」
オぺ:「それでは特急券から発券していきますので少々お待ちください」
決済方法を先に確認するのは目新しいです。カードを持っていても暗証番号がわからないと発券できないので…。まずは「のぞみ62号」の発券から始めました。「Kaeruくん」ではディスプレイには「発券作業を行っています」という動きの乏しい画面が表示されるだけですが、「プラス」では「のぞみ62号」の後続の列車の空席状況と発車・到着時刻がディスプレイに表示される便利な機能がありました。列車を確定させてからは「6号車1番E席」と押さえた席が表示されました。
オぺ:「新大阪からのサンダーバードは21:01発ですが、43号ではなくて45号でよろしいですか?」
私:「45号でいいです」
何でそんなことを聞くのかと思ったんですが、私が間違えて申込書に新大阪ではなく大阪発の時刻を書いていたようです。そのための確認だったようです。そんな間違いもディスプレイに表示される空席情報で何が正しいのかすぐにわかります。残りの列車や乗車券も同じように発券が進みました。私がオペレーターとやり取りしている最中に背後に人の気配を感じました。駅員がちゃんと使えているか見ていたようでしたが、監視されているようでちょっと嫌な感じでした。
最後に「Kaeruくん」と同様に申込書と株主優待券を投入口に入れて、全て完了となりました。
これらが発券されたきっぷです。5枚全部貼っても意味がないので3枚だけにします。発売箇所表記は「須磨駅MV31」と従来の「みどりの券売機」発券時の表記と変わりません。でも、今までの「みどりの券売機」の機能では取扱えなかった株主優待割引適用のきっぷがこうして発券できているので、「プラス」の機能であるということがわかるかと思います。
使ってみた感想として、ユーザーの立場では以下の二点で「Kaeruくん」よりはいいと感じました。
- 従来のMV30型にオペレーター呼び出し機能を追加しただけなので、オペレーターを介さずとも購入できる簡単なきっぷは、MV30型の機能で対応できる。
- ディスプレイに空席情報が表示されるため、間違いの修正や希望列車満席時の次候補を選ぶ時にもスムーズ。
JR東日本の「Kaeruくん」の失敗は念頭に入れ、必要な改善を施した上で導入したものと思われます。今後、状況を見極めつつ、この機能をJR西日本全体に広げていくのかもしれません。個人的には須磨駅のような有人窓口廃止の代替としてよりも、窓口閉鎖時間帯の「繋ぎ」として使って欲しいと思います。