続・吾輩はヲタである

JR券をメインとしたきっぷのブログ

九州ネット早特7価格変動実験中

 JR九州の「九州ネット早特7」で今年3月1日~6月30日乗車分について3,400円~4,200円の範囲で過去の乗車率や予約状況に応じた価格変動制を導入しています。現在「九州ネット早特7」は九州新幹線・博多~熊本間のみで設定され、通常価格は3,800円です。それを上下400円の範囲で変動させることになります。

www.imadegawa075.net

 今年3月16日のダイヤ改正からJR北海道の一部列車でも導入されたイールドマネジメントシステムです。JR九州は3月1日からなので半月ほど先行した形となります。

 JR九州のHPには価格変動制導入の理由として以下のようなことが書かれています。

博多~熊本の九州新幹線は、当社管内の新幹線及び在来線特急列車のうち、最も多くのお客さまにご利用いただいておりますが、乗車日や乗車時間帯等により、列車毎にお客さまの乗車率は様々です。お客さまのご利用の平準化を図り、快適なご旅行を提供できるよう、同区間に価格変動制を導入することとしました。
また、「九州ネット早特7」をお使いのお客さまやご利用を検討していただいているお客さまは、価格に敏感な方が多いと考えております。これまでよりもさらにおトクな価格を訴求することで、より多くのお客さまに九州新幹線をご利用いただく機会を提供できると考え、「九州ネット早特7」に価格変動制を導入することとしました。

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 かつて博多~熊本間の「九州ネット早特7」は2,570円でしたが、相次ぐ値上げによって現在は3,800円にまで上がっています。ほぼ1.5倍です。個人的には2,570円がベースなので3,400円でも「おトクな価格」と言うほど安いという印象はありません。


 価格変動制が適用された「九州ネット早特7」の価格を調べてみました。全部調べると大変なので、利用が多そうな博多を朝8時~10時台に発車する以下の11列車に絞りました。

列車名 博多発 熊本着 始発駅 終着駅
つばめ313号 08:10 08:59 博多 熊本
みずほ601号 08:30 09:02 新大阪 鹿児島中央
さくら403号 08:40 09:18 博多 鹿児島中央
つばめ315号 08:51 09:40 博多 熊本
さくら541号 09:06 09:44 新大阪 鹿児島中央
さくら543号 09:28 10:06 新大阪 鹿児島中央
つばめ317号 09:36 10:24 博多 熊本
みずほ603号 09:53 10:28 新大阪 鹿児島中央
みずほ605号 10:20 10:52 新大阪 鹿児島中央
さくら545号 10:38 11:16 新大阪 鹿児島中央
つばめ319号 10:47 11:35 博多 熊本

 「みずほ」が3列車に「さくら」と「つばめ」が4列車ずつでバランスは取れています。記事作成時点で購入可能な25日間(5月30日~6月23日)についてネット予約をポチポチしながら価格を調べてみました。その結果以下の通りでした。

列車名 25日間で設定されていた日数 25日間の
平均価格
3,400円 3,800円 4,200円
つばめ313号 14 11 0 3,576円
みずほ601号 0 3 22 4,152円
さくら403号 1 7 17 4,056円
つばめ315号 14 11 0 3,576円
さくら541号 0 0 25 4,200円
さくら543号 0 0 25 4,200円
つばめ317号 7 14 4 3,752円
みずほ603号 0 10 15 4,040円
みずほ605号 0 0 25 4,200円
さくら545号 0 0 25 4,200円
つばめ319号 0 21 4 3,864円

 調査時点で全日・全列車で空席がありました。3,400円~4,200円の範囲で価格変動とされていますが、実際には3,400円と3,800円と4,200円の3パターンだけでまさに松竹梅のような感じでした。100円単位でもっと細かくいじくっているのかと思っていたので拍子抜けしました。

  • 山陽直通の「さくら」はずっと4,200円固定で価格変動しない
  • 3,400円で利用できる可能性があるのは博多始発の列車だけ
  • 「みずほ」「さくら」は全列車で25日間の平均価格が本来の「九州ネット早特7」の定価3,800円より上がっているので実質的に値上げ

 結果からこんな情報が導き出せます。さらに曜日の観点でも設定価格や平均価格について調べてみました。

  週合計
3,400円 2 2 1 3 0 0 2 10
3,800円 5 2 6 1 4 2 4 24
4,200円 4 7 4 7 7 9 5 43
曜日別
平均価格
3,873円 3,982円 3,982円 3,945円 4,055円 4,127円 3,909円

 乗車7日前(5月30日)以外はきれいにこの規則性に則っていました。とりあえず曜日と列車の組み合わせで価格を決めているっぽいことは分かりました。この時間帯の列車については金曜日が土曜日並みに高いのと、逆に日曜日が月曜日並みに安いということが読み取れます。日曜日が意外と穴場です。

 ちなみに乗車7日前の5月30日については「さくら403号」だけが木曜日所定の4,200円から3,400円に下がっていました。予約状況を勘案して価格を下げたんだと思います。その他の列車は木曜日所定の価格からの変動はありませんでした。

 「つばめ」を中心に3,400円で利用できる「九州ネット早特7」が用意されましたが、週合計の数を見て分かる通り3,400円に下がった列車が10本に対して、4,200円に上がった列車が43本と格段に多いです。価格変動制と言いつつ実態は値上げで、「価格に敏感な方」は安い列車を探すよりも他の交通手段に流れると思います。

 GWに熊本旅行に行った際に利用した「九州ネット早特7」です。

3,800円の「九州ネット早特7」

 「さくら403号」の前の「つばめ313号」は3,400円だったんですが、博多駅での接続が厳しかったのでこの列車にしました。GW最中だけあってこの後の列車はみな4,200円でした。

4,200円の「九州ネット早特7」

 翌日の帰路は帰省ラッシュのピーク日で満席となる列車もある中でこの「つばめ328号」は辛うじて空席がありました。残り席数が少なかったので「つばめ」の「九州ネット早特7」でも4,200円しました。

 仮にこの価格変動制を7月以降も継続するならば、そろそろ発表があろうかと思います。個人的には価格変動制なんて利用者にとっては不明朗会計以外の何物でもなく、分かりにくいだけだと思っています。逆に事業者側は価格をブラックボックス化して好き勝手いじくり回せれますから、各社導入に向けて頑張っているんだろうなと思っています。

 もっとも、私のような素人が1~2時間分析しただけでこの程度の傾向が見えてしまうあたり、ブラックボックス化はまだまだ先だなと感じます。

【補足:2024/5/30】

 「九州ネット早特7」の価格変動制は7月以降正式に導入されることが発表されました。↑の傾向も少しは変わるかもしれませんが、実態はステルス値上げですので過度な期待は禁物だと思っています。