続・吾輩はヲタである

JR券をメインとしたきっぷのブログ

伊予灘ものがたりフィオーレスイート

 私の母は『3年後の離職率が80%』と言われる生き馬の目を抜くような業界で30年勤め上げた剛の者でしたが、3~4年前に定年より早めに退職し前期高齢者として今は悠々自適な日々を過ごしています。

 そして、時間があり余っているせいか最近やたら旅行に行きたがるようになりました。お前が全部考えて一切合切お膳立てして母を連れてけ、うまいもの食わせろ、でも経済合理性を忘れてはならぬという厄介なスタンスです。

 私は常々「体力が余っていて意識の高い高齢者ほど面倒くさい生き物はいない」と考えているので前期高齢者とのサシは無理な相談で、嫁を入れた3人だと嫁が気の毒なので、緩衝材として妹一家を巻き込むことになります。妹のダンナは家庭よりも仕事が100倍好きな人間なので人数から除外できますが姪・甥1・2は自動で付いてきます。めでたく小・中・高校生から前期高齢者までが揃う7人の混成団体が完成します。

 行先の選定に行程の検討、その後の列車・飛行機・ホテル・昼食夕食等々ロジスティクスの手配は全部私の役目です。添乗員は当たり前でレンタカーの運転もします。前期高齢者は結婚前に某ナショナルフラッグのCAとして世界中を飛び回った経験があるので、要求水準は高く不手際は許されません。

 かと言って前期高齢者に合わせるあまり緩衝材のクソガキども子供たちを退屈させてもいけないので、それぞれの趣向を勘案し全員が一定以上の満足度を得られる最大公約数的な行程・企画を組まなければなりません。自分一人の旅行なら1時間もあれば全部手配できますが、7人の混成団体の準備には2~3ヶ月かけ吟味を重ねます。

 満足して帰っていく母や妹一家を尻目に私だけボロボロに疲弊し、毎回「二度とやるか」と思っていますが、今年7月に3度目が実行されました。


 3度目になるので今年母が旅行行きたい病を発病した時にはねじ込むネタを考えていました。それは特急「伊予灘ものがたり」のフィオーレスイートに乗ることでした。

www.imadegawa075.net

 フィオーレスイートはキハ185系化された「伊予灘ものがたり」に設置された8人用のグリーン個室で、グループで一両まるまる専有できる大変贅沢な造りです。

 これまでも後で実費はちゃんと回収しているので、頭数で割れば私の持ち出しは少なくできます。無料のツアコンをやってるんですからこの程度の役得があっても然るべきです。幸い母からも妹からもフィオーレスイートの写真を見せて、乗ることに快諾が得られたので、あとのネックはきっぷの手配だけでした。

 しかし困ったことがありました。フィオーレスイートのきっぷはe5489も「えきねっと」も対応していません。指定席券売機でも買えません。こういう時に頼りにしていた「Club J-WEST会員専用ダイヤル」は今年2月でサービス終了してしまいました。

 7月の3連休初日の列車だったのでみどりの窓口での10時打ちに賭けるしかなかったんですが、10時打ちをしようにも自宅最寄り駅のみどりの窓口は今年1月に閉鎖されている上に、みどりの窓口があっても首都圏のJR東日本はナントカの一つ覚えのごとく「便利なえきねっと」をゴリ押しし10時打ちを受け付けない駅がほとんどです。

JR東海新横浜駅きっぷうりば 2023/6/15

 そこで頼りにしたのが以前10時打ちをしてもらったことのあるJR東海の新横浜駅「きっぷうりば」(≒みどりの窓口)です。窓口がたくさんある上に首都圏でなかなか出すことがないフィオーレスイートでもきちんと対応してくれるであろうという期待感がありました。

 10時よりだいぶ早く駅に着いて申込書に記入し第一希望と第二希望を伝えました。3人がかりであれこれ調べ、事前に別の日で試し打ちまでしてくれて静かにその時を待ちました。

 10時ジャストになって一回「発信」ボタンを押して画面をすぐに切り替えていたので、第一希望はダメだったことを悟りました。しかし第二希望で取れたので、まずは取れてよかったと安堵しました。

 こうして確保した第二希望の八幡浜編の特急券です。第一希望は道後編でした。券面の列車名は「伊予灘八幡浜編スイート」になります。

 グリーン料金は利用人数によらず一室28,000円(10月から33,600円に値上げ)固定で、特急料金は利用人数分(大人6人+小児1人)かかっています。37,100円という金額はこれまで私が買った1枚のきっぷでは最高値です。決済した時にやっぱりいいお値段するなと思いました。

伊予灘ものがたり3号車 2023/7/15

3号車入口 2023/7/15

 フィオーレスイートは山吹色の3号車にあります。3号車は「陽華(はるか)の章」と名付けられており、下り列車(大洲編・八幡浜編)は最後尾になります。

デッキとの仕切りのれん 2023/7/15

 デッキと客室を仕切るのれんです。八幡浜の老舗の手染めなんだそうです。フィオーレスイートの客室へは予約した客しか入れない決まりなんですが、乱入してきたク〇ブツーリズムの団体のおばちゃんや鉄ヲタが数人いました。うっかりなのか確信犯なのか分かりませんが、立ち入りできないことをもう少し分かりやすく表示した方がいいと思います。

初代伊予灘ものがたりエンブレム 2023/7/15

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初代伊予灘ものがたり:予讃線・下灘 2018/6/2

 3号車の通路の突き当りには初代「伊予灘ものがたり」の貫通扉に設置されていたエンブレムが飾られていました。伊予灘ものがたりの歴史を伝える生き証人です。もう解体されて残っていないと思っていたので、こんなところにあって驚きました。

桜の紋が入った壁

 フィオーレスイート車内の壁はこのように桜の紋が入った桜材が使用されていました。よーく見ないと気づきませんが、こんなところにもこだわりを感じます。

3号車通路 2023/7/15

 客室とデッキを結ぶ通路です。先ほどの初代伊予灘ものがたりのエンブレムはこの突き当りにあります。この写真の奥がデッキで背後が客室です。左側は食事の準備をするギャレーです。

フィオーレスイート客室 2023/7/15

 フィオーレスイートの客室は運転席寄りにあります。上り列車(双海編・道後編)では前面展望も独占できます。座席は全席海側に向いていて半円状のテーブルを囲むようにクッション付きの2席のソファシートが4つ並びます。「大切な人と過ごす時間と空間」というコンセプトなだけあって、これだけ広い空間を占有できる専有できる鉄道車両はなかなかないんじゃないでしょうか。

ランチョンマットはオリジナル 2023/7/15

 ランチョンマットはフィオーレスイートだけのオリジナルで今治タオルの糸を使用した手織りのものだそうです。1・2号車は紙のシートです。このランチョンマットはフィオーレスイートの利用客専用の車内販売で同じものが購入できたりします。

ウェルカムドリンク 2023/7/15

 松山駅発車前にウェルカムドリンクの提供がありました。グラスが乗っているコースターは桜の形をしています。慣れない子供たちはいきなりジュースが出てきて面喰ってました。

門田フレンチミニコースとお茶請けのクッキー

 八幡浜編の食事は松山市のレストラン門田のミニフレンチコースです。食べるのに夢中で料理はこの一枚しか撮ってなかったりします。食後のコーヒーのお茶請けのクッキーはフィオーレスイートの図柄が入っていました。

伊予灘ものがたり食事券

 以前の記事で紹介したように食事券は駅のみどりの窓口でなくてもJR西日本の「tabiwa by WESTER」というサイトで乗車の4日前まで購入できますが、今回はもともと四国に行く予定があったのでJR四国の駅で購入しました。駅で購入する場合は特急券の提示か同時購入が必要です。

 フィオーレスイート専属のアテンダントが1名いて、その人がもろもろ対応してくれます。追加の飲み物や食べ物が欲しい場合は待たずにすぐにお願いできるのは大きいなと感じます。最後に全員で記念撮影をしてくれて、それを写真サイズにプリントアウトして台紙も付けてくれるサービスもありました。

 私と嫁と甥1は観光列車に乗ったことはありますが、母はじめ他の4人は初めてだったようでした。最初からいきなり最高峰のサービスを受けてしまうのはどうかと思いますが、母や妹は車内販売のランチョンマットをお買い上げし、十分堪能して帰ったようでした。私も役得として懸案だったフィオーレスイートのきっぷを入手できて、今回ばかりはWin-Winで終わったと思います。


 2023年の記事はこれで終わりです。3年続いたコロナ禍による行動制限が今年5月に解除されて、ようやくマスクなしで大手を振って旅行に行けるようになりました。

 旅行業界はコロナ禍の落ち込みをここで取り返えさんばかりの値上げが続き、インバウンドもすごい勢いで戻ってきているので、個人的には動きにくい一年でした。コロナ禍で人が少なく旅行支援があった時期がボーナスステージだったと実感します。

 JR各社も類に漏れず値上げ(ステルス値上げも含む)にサービス縮小のラッシュで、利用者にとって良くなったと思えることが少なかった一年でした。個人的には10月に実施された「EX予約」の改悪が非常に痛かったです。

 来年は北陸新幹線が敦賀まで延伸されます。それまではいろいろ動くでしょうが、その後はどうしようかなと思っています。記事のネタのために動いているつもりはさらさらないんですが、正直なところ面白そうな話があまり浮かばないんですよね…。

 年明けは4日から再開する予定です。