続・吾輩はヲタである

JR券をメインとしたきっぷのブログ

JR東海☆夏の乗り放題きっぷ

 7月19日~9月10日にJR東海管内の快速・普通列車が2日間利用できる「JR東海☆夏の乗り放題きっぷ」(以下「夏の乗り放題きっぷ」)を3,900円で発売しました。一言で言えばJR東海版の「青春18きっぷ」(2日間用)です。

 JR東海には名古屋地区の「青空フリーパス」(2,620円)と静岡地区の「休日乗り放題きっぷ」(2,720円)という2つの在来線用のフリーきっぷがあります。これらは特急列車の利用もできますが、1日限り有効で発売は土休日と年末年始に限られます。「夏の乗り放題きっぷ」は快速・普通列車しか利用できない代わりに、2日間有効で期間中は毎日利用できました。

 しかし、「夏の乗り放題きっぷ」には余計な発売条件があって「EXサービス」で熱海~米原間まで利用することが必要でした。便利なきっぷは無条件では売ってくれません。

 「EXサービス」の予約済み画面の「EX旅先予約」からe5489に遷移し、e5489上で購入するいつもの仕組みです。購入には当然e5489のアカウントも必要になります。e5489はJR西日本の予約システムですが、このきっぷの受け取りはJR東海管内の駅に限られ、JR西日本の駅では受け取れないのが目新しいなと感じたところです。


 私は静岡まで新幹線で往復し、静岡から「夏の乗り放題きっぷ」を使って久しぶりに飯田線に乗ってみることにしました。終焉が近づいているJR東海の213系も気になっていました。そして、どうせ乗るなら飯田線全線(195.7Km)を走破する列車に乗ってみたいと思いました。

 下りの対象列車は以下の3本です。

豊橋(10:42)→辰野(17:20) 【519M:岡谷行き】

豊橋(14:38)→辰野(21:25) 【531M:岡谷行き】

豊橋(16:42)→辰野(22:36) 【539M:上諏訪行き】

 営業キロベースで200Kmもない区間ですが、単線で途中の交換待ちの時間が長い上に山間を縫うようにして走って線形も悪いので距離の割にかなり時間がかかります。

飯田線519M:豊橋駅 2025/8/30

 私が乗車した519Mは豊橋から辰野まで6時間半かかる長丁場でした。213系が来ないかかなり期待していたんですが残念ながら313系でした。静岡から豊橋までの移動でも313系だったので既に飽きていました。

本長篠駅17分停車 2025/8/30

 新城までは高齢者や学生などの近距離客が多かったですが、本長篠から先は私のような長距離っぽい客がほとんどになりました。豊橋からの乗り通していた客も少しずつ減っていき、駒ヶ根(それでも豊橋から5時間半)で最後の人が降りてからは豊橋からの乗り通し客は私だけになっていました。

飯田線を縦断し岡谷駅に到着した519M 2025/8/30

 「夏の乗り放題きっぷ」がJR東海管内でしか使えないことを逆手にとって飯田線の乗り潰しに使いましたが、終点の岡谷まで乗り通した時にはただ乗っていただけで自分で何か成し遂げたわけでもないのに妙な達成感がありました。

213系の普通列車:飯田線・伊那市駅 2025/8/31

213系車内 2025/8/31

 その日は伊那に一泊してから元来た道を戻りました。その際に飯田までは213系に乗ることができました。213系については追いきれてないので近々再履修の予定ですが、今度は素直に中央東線周りでアプローチすることにします。

 「夏の乗り放題きっぷ」の結果はこのとおりになりました。

  乗車区間 運賃
8/30(土) 新横浜~静岡 [2,640円]
静岡~辰野 5,720円
辰野~伊那市 330円
8/31(日) 伊那市~飯田 990円
飯田~豊橋 [2,640円]
豊橋~静岡 1,980円
静岡~新横浜 [2,640円]

 []内の額は新幹線や特急を利用し「夏の乗り放題きっぷ」は使わず別途運賃を支払った区間です。「夏の乗り放題きっぷ」利用区間の運賃のトータルは9,020円でいい感じで元は取れています。

 ここで「青春18きっぷ」の時と同様に「夏の乗り放題きっぷ」の効果額を計算してみます。効果額は正規運賃から手出しで運賃を支払った額の差額になります。仮に全区間普通列車で利用すれば正規運賃がイコール効果額となります。

【往復正規運賃】

新横浜(横浜市内)~豊橋~辰野 8,030円×2=16,060円

【手出し額】

2,640円+2,640円+2,640円=7,920円

【夏の乗り放題きっぷ効果額】

16,060円ー7,920円=8,140円

 効果額でも3,900円の「夏の乗り放題きっぷ」を十分すぎるぐらい元は取れています。JR東海にとっては片道か往復のいずれかで東海道新幹線を利用してもらえて、さらに他社に費用が流出しない自社完結のフリーきっぷも利用してもらえれば万々歳なのかなという気がします。

 「夏の乗り放題きっぷ」は私のようにJR東海の営業エリア外に住んでいて、JR東海管内に行く際に普通に新幹線を利用する場合には使い勝手のいいきっぷでした。しかし、既にJR東海管内に住んでいる場合や、新幹線以外の交通機関でJR東海管内入りする場合は「EXサービス」利用という余計な発売条件が付いていると購入できません。

 そう考えると「夏の乗り放題きっぷ」は客層選ばず幅広く利用できる「青春18きっぷ」のJR東海限定版というよりは、「EXサービス」で東海道新幹線を利用してくれた客に対するオプション券という位置づけの方が近いのかもしれません。「JR東海☆冬の乗り放題きっぷ」が発売されるかは密かに注目しています。


www.yomiuri.co.jp

 8月9日の読売新聞(おそらく中部版)の報道によると、本家「青春18きっぷ」は昨年冬季に連続でしか使えなくしたことにより大きく販売数を減らし、2023年度に62万枚だったのが2024年度には3分の2の41万枚になったったそうです。2024年度夏季は変更前で2025年度は通年で変更後なので、2025年度は2024年度よりもっと減ると思います。2023年度の半減以下も十分あり得ます。

 記事内でJR東海が取材に応じていて「販売実績は減少したが、各社が各エリアの利用実績や路線の特性に応じたお得な切符を設定している」とコメントしています。「夏の乗り放題きっぷ」もそのうちの一つなのかもしれません。とにかく現状だとJRグループの総意として「青春18きっぷ」は確信犯的に衰退させていき、そのうち発売終了するんだろうなという未来が透けて見えます。